更新日:2022年12月30日 09:54
ライフ

転職1週間で「お前の欠点一覧表」を渡され…ITベンチャーの狂った社風を見た

「君は感謝のマインドが絶望的に欠けている」

 そんな気持ち悪さに耐えながら、半月ほどの研修を終えた今野さんに襲い掛かったのが、休日に社員全員が強制的に受けさせられたセミナーだ。 「入社して1か月ほど経った頃、帝王学のセミナーを受けさせられたんです。講演者のおじさんは“気”や第6感的なものを帝王学と混ぜて宗教っぽい形にしていて。いわく、『俺はアメリカでデカいビジネスをやっている。俺が帝王学とその元となる“気”についてお前らに教えるから、それをマスターして俺についてくれば、お前らは必ず成功する』とのことでした」  丸々8時間、気が狂いそうになりながら帝王学についての話を聞きながら、今野さんは“一刻も早くこの会社を辞める”と心に決めた。 「そんなある日、新橋のルノアールに呼び出されて、『お前が出社すると会社の利益が下がるから明日から来ないでくれ』と言われ結局クビです。会社都合になったので願ったり叶ったり。『君は感謝のマインドが絶望的に欠けている。こんなに身勝手な人は今まで初めて見た。あなたは私たちに感謝すべきですよね?』とまで言われたんですけど、僕を採用して何をしたかったのか…本当に謎ですね」  今野さんは2か月ほどで3社目となる転職先を決め、現在、渋谷のITベンチャーで営業として働いている。  転職を誘った上司からは今もたまに連絡があるそうだ。 「インターンの男の子も精神病んで辞めたらしいです。彼は専門的なスキルを持っていたんで、社長がなんとか入社させようと画策していて、実は僕も『あいつは絶対に入れなきゃいけないからそのつもりでお前も動いて』と言われたことあるんです。可哀想だから裏で『この会社入んないほうがいいよ』って話はしていたんですけど、『お前そんなんだったら社会に出てからなんの役にも立たないからこの会社でもっと頑張らなきゃいけない』とか言われたらしい(笑)。あと、比較的まともな40代後半の技術で入ったおじさんがいたんですけど、年齢的にも後がないって言って、いま死ぬほど働かされているみたい」  在籍してまだ半年ほどだが、先月2か月連続でトップの営業成績を繰り出したという今野さん。「帝王学と感謝のマインドのおかげかもしれませんね」と苦笑した。<取材・文/伊藤 綾>
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
1
2
おすすめ記事