「地方創生」というキーワードが注目を集めるなか、都市部の生活から離れ、地方ののどかな暮らしを願う「地方移住」の意識が高まっている。有楽町にあるNPO法人「ふるさと回帰支援センター」によれば、ここ数年で相談件数は増え続けているという。
そんななか、東京など都市部から近いとあって、最近注目を集めている移住エリアが埼玉県だ。東京への通勤圏内であるにもかかわらず、多くの自然が残り、住宅支援や農業支援も充実。仕事を変えずに地方移住を実現できるとあって、現役世代を中心に人気だ。とはいえ、移住には「住まいはどう選べばいいの?」「周辺の住民の方とやっていけるかな?」など不安はつきもの。そこで、実際に埼玉県飯能市に移住した遠藤さん一家(夫婦+子ども3人の5人家族)に話を聞いてみた。
埼玉県飯能市に移住した遠藤さん一家
子どもたちが自慢できる故郷を作りたい
――移住したきっかけは何ですか?
「もともと田舎育ちで都会暮らしが得意ではなかったんです。それに趣味が年間30泊するほどのキャンプ好きでして、アウトドアを楽しめる自然豊かな広い家で子どもを育てないなとずっと思っていました」
――移住先を探すにあたって条件はあったんですか?
「職場が東京都立川市なので、通える距離。神奈川県や山梨県、長野県などいろいろ見て回りました。でも、不便すぎると子供たちが嫌いになっちゃいそうで、それは絶対に嫌でした。子どもが成長して高校生になったら、交通費だけでも何万円もかかってしまう。駅から遠くて、子どもがランドセルを背負って朝1時間もかけて学校に行くとかはさせたくない。だから、条件としてはまず子どもたちのことを考えて小中学校に歩いて通える距離、何かあったときのために近くに病院があるところでした。あとは、広い家と薪ストーブが使えるという条件もありましたけどね(笑)。なかなかこうした条件の移住先って無いんですよ」
遠藤さんの念願だったログハウスに薪ストーブ付きの家
――その中で、見つけたのが埼玉県飯能市という移住先なわけですね。
「5年ほど家を探していたんですが、なかなか見つからず、ある日飯能市が募集していた『農のある暮らし飯能住まい』をネットで見つけて“これだ!”と。そこには僕がやりたかった生活のすべてが書いてありました。立川市の職場にも車で通える距離だし、もうここしかないと。翌日には市役所に相談に行ってましたね。地盤が強いかどうかも土地選びの条件の一つでした。都心には電車1本で行けるし、始発駅でもある。入間市にいけば大型ショッピングモールもある。欠点を見つけるのが難しかったぐらいです」
――移住して大きく変わったことはありますか?
「子どもたちが活発になりましたね。朝はとにかく早く起きるようになった。鳥のさえずりというか大合唱というか(笑)。気持ちよく起きるようになりました。それに、移住して来て人との繋がりが強くなりました。今の時代、隣近所で“こんにちは”ってなかなかないじゃないですか。今は消防団に入っていて、ご近所さんも子供たちをすごく歓迎してくれる。僕ら夫婦はもともとご近所付き合いが苦手で移住当初は少し不安があったんですけど、市役所の職員さんたちがかなりバックアップしてくれました。芋ほり体験とか夏祭りに参加し、地元の人に誘われたカラオケ大会では尾崎豊を熱唱。交流の場がたくさんあります」
――移住で不安視されるのが「地域交流」だったりしますけど、その不安は杞憂だったわけですね。移住して良かったですか?
「今まで週末に3時間かけてキャンプ場に行ってたのが、今はバーベキュー場まで10分。いつでもキャンプができるのもいいですね。今は子どもたちが自慢できる故郷を作ってやりたいと思っています。将来、孫を連れて帰って来れるような田舎にしたいですね」
豊かな自然の中で子どもたちも伸び伸びと遊ぶ
[動画情報]
「埼玉物語」
都会暮らしに疲れた一家が移住を決意。最初は反対していた子供たちも、自然に囲まれた移住先の埼玉県の環境に惹かれ、笑顔を取り戻していく物語。移住とは何かを問う話題作
取材・文/日刊SPA!編集部 提供/埼玉県庁