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犯罪少年は完全悪なのか…映画『ギャングース』が描く日本のリアル<対談>

善と悪に線引きはない

入江:『ギャングース』を製作して思ったのは、何が善で何が悪かの線引きはないってことですよね。 鈴木:どうしてもこの手の作品って、勧善懲悪モノになりがちですからね。 入江:『家のない少年たち』(編集部注※鈴木大介著。『ギャングース』の原案となった書籍)を読んで、彼らが今も社会に実在しているってことを伝えるのを大切にしなきゃって思いました。 鈴木:そうですね。テレビのニュースで「振り込め詐欺犯が逮捕されました」と報じて、一番悪い顔でストップモーションになるじゃないですか。俺はその編集に悪意しか感じなくて、加害者の生い立ちや犯罪に手を染める背景というのが絶対にあるはずなんです。それを知ったうえで、本当の悪を考えてほしいと言うメッセージはあります。 入江:映画製作前に地元のやんちゃしていた人にインタビューしたんですが、中学生のときに親父を金属バットで殺そうと思ったみたいな人。聞けば、子どものときの家庭環境に問題を抱えていて……悪いことしていたときは、そういうテレビで流れるようなスゴい悪い顔をしていたんだと思う。でも、本当は真面目で。話すほど、自分が一面しか見ていなかったんだと痛感しました。 鈴木:彼らの親についても描いてくれましたもんね。貧困、虐待、格差、裏稼業とかに興味ない人も家族の物語には興味がある。そこは原作ではドライに描いている部分だったので、嬉しかった。 入江:親は誰にでも絶対いるはずなんで。でも、虐待とかエグいシーンを描きすぎるのはまた違う。その背景があるんだけど、というバランスは苦労しましたが、伝えたかったところです。 鈴木:バトンタッチ感は十分強かったと思いますよ。 入江:でも、映画は2時間しかないので……鈴木さんの情報量がめちゃくちゃ多いので、自分の中で整理して映画に落とし込むのは大変でしたけどね(笑)。  犯罪を正当化することはできない。だが、最底辺を生きる犯罪少年たちの背景に少しだけ目を向ければ、見方も変わるのかもしれない。 構成/石井カイジ 撮影/Wataru Nishida(WATAROCK) 犯罪少年は完全悪なのか…映画『ギャングース』が描く日本のリアル【対談】『ギャングース』 モーニングで連載していた漫画『ギャングース』(漫画家・肥谷圭介×ストーリー共同制作・鈴木大介)を映画化。親から虐待され、青春期を少年院で過ごした主人公たちが犯罪者だけをターゲットにした“タタキ(窃盗・強盗)”で成り上がっていく、青春エンターテイメント。詳しくは公式サイト(http://gangoose-movie.jp/)から
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11月23日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
©2018「ギャングース」FILM PARTNERS©肥谷圭介・鈴木大介/講談社
配給:キノフィルムズ

ギャングース・ファイル 家のない少年たち

親と社会に棄てられた少年が、生きるために選んだのは犯罪だった。原案漫画も人気沸騰、少年犯罪の現実を抉り出す衝撃のルポ

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