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「THE W」、下ネタより気になった“無理に褒める審査員”の存在…「むしろ女性芸人に悪い印象を与える大会」と思うワケ

 ネット上では、ほぼ毎回のように存在意義を問われている印象がある。今年度は12月10日に放送された『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系、以下、THE W)のことだ。  その論調のほとんどは、以下の問いかけに集約されている。 「M-1グランプリにも女性芸人は出場できるのに、なぜ女性専用の大会が用意されているの?」  たしかに、うなずける部分はある。「体力で闘うスポーツじゃないのだから、女性芸人だけで賞レースを開催するのは女尊男卑!」という雑な主張をしたいわけではない。女性芸人だけを囲い、そのなかでだけ優勝者を決めて「女性の活躍!」と謳うのは、逆にバカにしているようで女性の活躍を妨げかねない……という印象を受けるからである。
女芸人No.1決定戦 THE W 2024

日本テレビ『女芸人No.1決定戦 THE W 2024』公式サイトより

女性芸人だけの賞レースとM-1は共存するか?

 一方、THE Wならではの存在意義を挙げることもできる。2024年大会からTHE Wのプロデューサーを務める日本テレビの片岡明日香氏は以下のように語っていた。 「男性優位とされてきたお笑い界の中で、女性芸人は勝負できる表現の幅が狭かっただけで、元々ポテンシャルはあった。だから『THE W』を女性だけの大会にしたことで、そういう本来の能力が遺憾なく発揮できるようになったと思っています(「CREA WEB」2024年12月10日)  おもしろさやテクニックのみが物差しのM-1では見落とされがちな、女性芸人ならではの世界観。それらを披露しやすいTHE Wという環境を用意し、堪能する。男子プロレスと女子プロレスが共存しているように、女性芸人限定の賞レースにしかない魅力が浮き出れば、その時点で大会の存在意義はきっと生まれるはずだ。

THE Wでよく見るネタの傾向がある

 ところが、毎年、あまりそういうイベントにはなっていないから残念なのだ。たとえば、放送中から賛否を巻き起こした今年の最終決戦における各組のネタのセレクトについて。  SNSでは「3組全部が下ネタ!」と驚きの声が散見されたが、正直、別にそれはどうってことない。『キングオブコント2019』(TBS系)を制したのは下ネタを貫き続けるどぶろっくだったし、2021年に開催された『シモネタGP』(ABEMA)は楽しく見たものだ。芸人らがエロネタを競い合う『ゴッドタン』(テレビ東京系)の「ネタギリッシュNIGHT」は出色の企画である。下ネタという飛び道具を使ったものの、そのリスクほど笑いが起きなかったのがなにより悲しかった。  昔から下ネタ一本でやってきた紺野ぶるまはともかく、他の2組(にぼしいわしと忠犬立ハチ高)が「うんこ」と「官能小説」を題材に選んだのも驚きではあった。『キングオブコント2022』(TBS系)で審査員を務めた東京03・飯塚悟志が「キスは禁じ手だと思う」と出場者へ苦言を呈したように、少なくとも賞レースでは下ネタ(性的なネタ)から脱却する流れにある男性芸人と比較すると、興味深い現象だ。  もう一つ気になるのは、女性ならではの感性を織り込むネタがテンプレ化してしまっている現状。容姿を自虐するネタ、年齢を自虐するネタ、嫌な女あるあるのネタ、そして下ネタのことである。『R1グランプリ』(フジテレビ系)でフリップネタを見るときに似た既視感は、THE Wのほうでも覚えることがある。  女性にしかできないネタという観点でいえば、やはり吉住はスペシャルだった。
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“無理に褒める審査員”とM-1とのコントラスト
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