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長与千種に暴行した一般人男「もしガチで戦ってたら?」元世界王者がジャッジ

吉田沙保里が当事者だったら……!?

 いかがだっただろうか。専門家のシビアな目で見ると、男女間の力の差を考慮したとしても、長与優位のジャッジは翻らないようだ。では、これがプロレスラーじゃなかったらどうなるのか? たとえば女子キックボクサーや女子レスリング選手だったら? 「残念ですが、路上において女子のキックボクサーは一般男性に負けてしまう可能性が高い。逆に女子レスリング選手は有利に戦えるでしょう。たとえば吉田沙保里選手だったら、20kgくらいの差があっても男性相手にタックルを決めて、袈裟固めでタップを奪えるはずです。マーク・コールマンがやるように頭を強引に引っ張られたら、一般男性はひとたまりもない。185cm、90kgくらいある男性でも、たぶん157cm、55kgの吉田選手に負けちゃうんじゃないかな」  総合格闘技的な技術がない者同士がケンカで戦った場合、どのような展開になるか? 勝村氏によると、その答えは1993年に行われた第1回のUFC(アルティメット)大会で、すべて出ているという。ボクサー、キックボクサー、極真や伝統派の空手家、力士などが集結した同大会を制したのは、体格面で劣るブラジリアン柔術家のホイス・グレイシー。つまり組み技スキルを持った者が有利ということである。 「ラッキーパンチはあっても、ラッキータックルは存在しない。同様にラッキーでパンチを避けることはできても、ラッキーでタックルを切ることはできない。ズバリ言って、路上では組み技ができる人こそ強いです。そういう意味では、女子レスリング選手と同様に女子柔道家もすごく強いと思いますね」  問題のDV男に話を戻そう。長与が直面したような状況にわれわれ素人が遭遇した場合、どのような行動を取るのが適切なのか? 「まずは警察を呼ぶ。これは言うまでもありません。そのうえで自分が力のある男性だったら、相手を倒して制圧するという選択肢もありますが……。ただ、これは非常にリスキーなんですよ。抑え込みというのは相手が1人で、なおかつ武器を持っていない前提の話ですから。もし相手に仲間がいたら、その時点でゲームオーバー。あとはもう正義感の問題になってきますね。つまり自分がケガする恐れもあるけど、目の前で女性が乱暴されているのを看過できるかどうかという観点です。長与選手のように自分が女性だったら、現場には向かわないほうが無難。それよりは周りの男性に助けを求めるとか、道具を探すとか、とにかく他の選択肢を取るべきだと思います」  勝村氏自身、今回の長与の一件で本当の危機管理はどういうことかを深く考えさせられたという。 「ひょっとしたら、長与選手の頭には戦って自分が負けるケースも頭をよぎったのかもしれませんね。その上で、あえて戦わないという選択をしたのだとしたら、これまたすごい話ですよ。逆に自分が勝ったところで、相手のDV行為を止めることはできるかもしれないけど、こっちもダメージを負う恐れがある。それどころか、周りにいる自分の弟子も傷つく危険性がある。結局、街中でケンカなんてしたところで、勝っても負けてもいいことはないんですよ。ありきたりかもしれませんが、それが結論です」〈取材・文/小野田 衛〉 勝村周一朗◎かつむら・しゅういちろう 1976年、神奈川県生まれ。総合格闘家として修斗、ZST、HERO’Sなどの舞台で活躍。児童養護施設の職員として働いていたことから「リアルタイガーマスク」と呼ばれることも。10年には修斗世界フェザー級チャンピオンの座に輝く。13年のプロレス転向後はガンバレ☆プロレス、覆面MANIAなどのマットを主戦場に。名伯楽としても知られ、主宰するリバーサルジム横浜グランドスラムから多くの選手を輩出している。
出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。
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