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デモに賛同しなければ非国民!? フランス暴動のリアル

フランス暴動

写真/AP/アフロ

マクロン大統領は事実上の“白旗“

 フランスの大規模デモが、世界の注目を浴びている。11月後半から毎週末にわたって、黄色いベストを着た労働者たちが「マクロン大統領退陣」を訴えて各地で活動。パリだけで1万人、全国で13万人以上が参加するほどの規模に膨れ上がっている。さらに、一部の暴徒は高級ブティックなどを襲撃して、店内の商品を略奪。凱旋門やデパート、路上のクルマが破壊され、2000人近くが逮捕されているのだ。  このデモの発端はマクロン大統領が打ち出した燃料税の引き上げだったが、12月4日にはフィリップ首相が6か月間の増税延期を発表。5日には「’19年中は実施しない」とさらに譲歩し、10日にはマクロン大統領が緊急テレビ演説で最低賃金の引き上げを発表することに。暴力的なデモが政治を変えた瞬間だった。パリで取材を進めている在英ジャーナリストの木村正人氏は次のように話す。 「フランスでは燃料価格に占める税負担の割合が約60%。直近1年間でガソリン価格が15%、ディーゼル燃料が23%も値上がりしているのですが、その値上がり分の3分の1は増税によるものなんです。一方で、フランスの運輸・倉庫業の就業者の賃金はEU加盟国内で2番目の高さ。EU新参組のルーマニアなどと比較して5倍以上も労働コストが高いため、どんどん低コストの国に仕事を奪われている。 その結果、約10年でフランスの平均可処分所得は年間440ユーロ(約5.6万円)、最も影響を受けた5%の世帯に絞ると2500ユーロ(約32万円)も減ってしまった。にもかかわらず、マクロンは富裕層や大企業を優遇する政策を打ち出し、地球温暖化対策として“脱炭素”経済を掲げて電気自動車を後押しするべく燃料税の引き上げを進めてきた。 それで、トラックドライバーなどの運転を生業にする労働者たちがクルマに積んでいる黄色いベストを着こんで反対運動を始めたんです。地方部ではトラクターのガソリン代が払えず、農作業に馬を使うようにした農家も出てきています」
マクロン大統領

マクロン大統領

 そんな国民の窮状をよそに、2040年までにガソリン車とディーゼル車の販売停止を掲げるマクロン大統領は「電気自動車を買えばいい」と発言。16世紀の絶対君主ルイ16世の王妃マリー・アントワネットの「パンがなければお菓子を食べればいい」を想起させる言葉で、国民感情を逆なですることに……。政府の対応のマズさが、火に油を注いでしまったのだ。パリ在住のジャーナリストである神戸シュン氏もこう話す。 「治安維持に努める警察機動隊はわずかな騒動でも、催涙弾を群集に向かって“水平撃ち”することを躊躇しなくなりました。本来であれば、上空や群集の足元を狙って撃つもの。水平撃ちで頭部にヒットしようものなら、大惨事に発展しかねない。イスラム過激派のテロ以来、文民統制が機能しなくなってきているんです」
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労働時間が週35時間もデモをきっかけに
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