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新宿のケイさんはなぜホームレスに? 絵本『ケイさんのゆめ』に込めた思い

ケイさんがホームレスになったわけ

――絵本の中で、ケイさんがホームレスに陥る“要因”をかなりわかりやすく描いている印象を受けました。 鈴木 ホームレスになる理由は十人十色ですが、主に「カフカの階段」を軸に描いてもらいました。ホームレスになっていくプロセスは、小さな階段を一つ一つ降りていくようなもの。そして、実際に医療支援の場で見てきたホームレスの方は、発達障害のグレーゾーンや精神障害を抱えている人が多いんです。そこを絵本として、どう解りやすくするかには悩みました。 飯田 ネグレクトは絵で見せることはできましたが、発達障害を伝えるのに少し苦労しました。結果、「かんたんな仕事もできない」という表現に。 鈴木 「かんたんな仕事ができない」という一文に大人も子供もその意味に気づいて欲しい。特に子供は「なぜ、かんたんな仕事ができないの?」という疑問を持って欲しい。そして親子や先生たちと話して欲しいです。

「かんたんな仕事もできない」の一文に、彼らがいかに生きづらいかが伝わってくる

――終盤には、ケイさんが音楽を楽しみ、生きる希望を見出すシーンもありました。 鈴木 もっとホームレスの問題を取り入れることも考えましたが、子供も読むと考えた時に、あまりにも重すぎるのは良くないかな、と。路上で暮らす彼らにも、毎日の楽しみや、生きる希望は持っている。ホームレスの中には、社会復帰に希望を持っている人も多い。ただ、前述した「カフカの階段」は、一度下がってしまうとなかなか上がれない仕組み。特に日本の貧困層は一度陥ってしまうと、上がることは難しい。そんな彼らを少しでも支援できたら、と考えています。

消息不明になってしまったケイさん

――この絵本は実在するケイさんに見せましたか? 鈴木 いえ、この絵本の製作途中で、ケイさんは消息不明になってしまいました。生きているのかもわからない。もし本人に会えたら、ちゃんと報告したい。 ――将来的に、この絵本のビジョンはありますか? 鈴木 まだ描ききれていない問題があるので、第2弾、第3弾と続けていきたい気持ちはあります。この絵本をできれば小中高校生の道徳の時間にも使ってほしいし、医療系や福祉系の新人教育の場でも使って欲しいな、と考えています。皆さんで、日本の貧困を、日本のホームレス問題を意識して欲しいです。 ======================  ホームレスを怠け者、自己責任と切り捨てるのは、教育不足が理由にあると考え、貧困問題を語る一つのきっかけに、この本を活用するのはどうか。ケイさんの夢は、製作者の鈴木さん、飯田さんの夢でもある。 <取材・文/日刊SPA!取材班>
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