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韓国の受験生用宿舎「コシウォン」に日雇い労働者が増加……なぜ?

 また、資格試験のために韓国の地方からソウルへ上京し、短期でコシウォンに住んでいた韓国人のダヒさん(仮名・20代)。ご飯とキムチに、共用の洗濯機で使用する洗剤も無料だったという。学生街にあるコシウォンだったため、物価が安いことがメリットだった。しかし、その狭さには辟易していたそう。 「シャワーとトイレは部屋にありましたが、便器に座ったら膝が壁にぶつかりそうなぐらい狭かったです。隣の部屋の声が聞こえるので、電話は屋上に行ってかけていました。それから私の身長が170cmあるので、ベッドがとても窮屈でした」(ダヒさん)
コシウォン

コシウォンの部屋。非常に狭い

 彼女は、資格を取得してからすぐにコシウォンを後にした。退去予定も3~10日前に貸主に告げたという。

経済悪化に伴い日雇い労働者が増加

 このコシウォンを求めて、最近では受験勉強が目的ではない、貧困層の入居が問題視されている。高額の保証金を準備する必要が無いため、即入居を希望する日雇い労働者や病気の高齢者も多いのだ。  韓国では「非住宅住まい」の人口がおよそ37万世帯に達し、このうちコシウォンには15万世帯が住んでいると推定されている。有名大学を卒業後、大企業や公務員になることが「勝ち組」とされる学歴社会の韓国だが、経済低迷により若者の就職難が深刻化している。また、最低賃金を上げたことで失業率も増加した。 韓国 昨年11月、ソウルのコシウォンで火災が発生し、そこに住んでいた日本人の男性(50代)が逃げ遅れて亡くなった。死傷者のほとんどが日雇い労働者や近隣で働く露店商人で、年齢は40代~60代だった。建物は古く、スプリンクラーが設置されていなかったという。  静かな勉強部屋と食事が提供され、低家賃で経済的なコシウォン。昨今は低所得労働者にとって最後の砦となりつつあるが、安全面などの問題は山積みだ。今後は住宅設備を整えることが急務となっているだろう。<取材・文/南沙織>
渋谷系ギャル雑誌編集部を経て、フリーランスとして主に雑誌・ WEB の編集や執筆、広告のクリエイティブディレクターとして活躍。日韓クォーター・韓国語留学経験を活かした執筆も手掛ける。Instagram:@happycandybox
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