モンスター・井上尚弥、神童・那須川天心、中京の怪物・田中恒成の拳を守るお値段は?
――バンテージ巻きで“報酬”を得るまでに苦労があったのでは?
永末 ありましたね。最初は自分がキックボクサーのトレーナーだったこともあり、身近なところに掛け合ったのですが、「バンテージ巻くのに、なぜお金を取るの?」「他の人に頼むわ」「じゃあいいや帰って」など、キッパリ断られることが多かった。未だに「今日も稼ぎに来たの?」なんて嫌味を言われることもある。
でも、「とりあえず任せてほしい」と頼み、選手からは好評を得て、「これでもダメですか?」と交渉する。それに加えて、僕から「拳を痛めたら選手は試合ができず、選手本人もジムとしても収入は減ります。拳を守ることで、経営が安定しますよ」という事も伝えました(笑)。
報酬も最初は交通費、5000円、1万円と上がっていきました。ボクシング業界からもお声が掛かるようになり、東洋チャンピオンも任されるようになっていきました。
――バンデージ巻きに決めている“価格”はありますか?
永末 詳しくは言えませんが、選手のファイトマネーに合わせた報酬を頂いています。世界王者クラスになれば、“二桁”という風に。仕事として安定したのは、井上尚弥選手を担当できたのが大きい。井上選手も強打故に拳を痛めやすくて困っていたそうで、そこで僕にお声がかかった。
所属する「大橋ジム」大橋秀行会長に、僕から「東洋チャンピオンからは、これだけの報酬をもらっています。拳が壊れなかったら、この金額の1.5倍ください」と提示させて頂きました。結果、拳は壊れなかった。そうしたら大橋会長は、1.5倍どころではない金額を支払ってくれました。以降は毎試合、井上選手を巻かせて頂いています。
――井上選手の巻き方に特徴はありますか?
永末 包帯も3~4種類使い、左右で巻き方も変えます。やっぱりモンスターはこだわりも強く、ちょっと前には「12ラウンドを想定しているので、もう少し軽くしてほしい」という要望がありました。20gだけは軽くしましたが、あとは本人にバレないようバンテージの重心を変えて“軽く感じさせたり”(笑)。
井上選手もどんどん強くなるので、練習・試合を観ながらその都度に合った巻き方を追求しています。でも、巻き方を変えたのは本人には言わないようにしています。
――それはなぜ?
永末 巻き方を変えたと伝えて、本人が意識してしまい、打ち方などは変わってしまうのを防ぐためです。やっぱり自然な打ち方が一番良い。でも、井上選手のお父さんは気づくんですよね、「巻き方を変えたでしょ?」って(笑)。お父さんの目利きも凄い。
――同じボクシングで無敗の三階級王者・田中恒成選手は巻き方に特徴はありますか?
永末 彼は慢性的に拳を痛めていたので、保護重視です。やはりパンチ力が強いので、思い切り打てないのが悩みだったようです。依頼が来て“試し巻き”したら、「数年ぶりに強く打てました」と喜んでくれました。
前回の田口良一選手との試合でも任せてもらい、試合後半になっても強く打てていたので安心しました。試合後も拳を痛めてなかったので一安心。お父さんにもチーム入りを認めてもらい、今後の試合もサポートすることに。8月末の試合も担当します。
(編集部註釈:田中選手は8月24日、愛知・武田テバオーシャンアリーナでWBO世界フライ1位ジョナサン・ゴンサレス(28=プエルトリコ)と2度目の防衛戦を行う)
そんな永末氏がバンデージを巻く三階級王者・田中恒成選手のインタビューが、週刊SPA!7月9日号(7月2日売り)の巻末インタビュー「エッジな人々」に掲載される。無敗の王者ながら自身を“無名”と語る、孤高のチャンピオンの本音が明らかにされる!
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