モンスター・井上尚弥、神童・那須川天心、中京の怪物・田中恒成の拳を守るお値段は?
――井上選手、田中選手然り、世界で戦う選手のバンテージを巻く時に気を付けていることは?
永末 やっぱりバンテージのルールを把握しておくことです。バンテージチェックは対戦相手の陣営を立ち会いのもと行われるのですが、イチャモンをつけてくる相手もいますね(苦笑)。事前に日本ボクシングコミッションには確認しているから、相手のほうが規程を把握してないだけ。
でも、アメリカは試合を行う会場の“州”によりルールが違う。さらに、カットマンの信用度も影響していて、自分がダメだと言われた包帯を隣の陣営が使っていたことがありました。運営にツッコミをいれたら、「俺の担当じゃないから知らない」と誤魔化されることも多い。だからアメリカで試合する時は、バンテージも数パターン作れるように準備しておきます。
――キックボクシングの話になりますが、神童・那須川天心選手にも独特の巻き方があるんですか?
永末 彼は元々空手出身で拳の強さに自信はあったようですが、年々破壊力が増していることもあり、一度手首を傷めてしまい僕に依頼がきました。彼のバンデージは左右を変えていて、片方だけ手首を少し固定気味にしたり。自分は天心選手の所属ジム「TEPPEN GYM」でフィジカル指導も担当しているので、総合的に彼を見させてもらっています。
(編集部註釈:TEPPEN GYMは、那須川天心の父が運営するキックボクシングジム。永末氏は同ジムでは「RIZIN」に上がるなど人気上昇中の白鳥大珠選手のバンデージも担当している)
――年末の「RIZIN」で、フロイド・メイウェザー戦のバンテージも担当したそうですね。
永末 本当に来るか来ないかわからない状況で、いつ巻いていいのか迷いました。正式ルールでは両陣営の立会いのもとで、巻いてもらう。でも、天心選手の体を温める時間もあるので、運営に許可を取り一度巻いたんですよ。そして、ようやくメイウェザー陣営がきて、「俺らが見ていない。もう一回巻け」と言われて困りましたね(苦笑)。
――バンデージのスペシャリストとして知名度が上がっていますが、「教えてほしい」と言われませんか?
永末 今年になって30~40件近くはきていますが、スティッチの話じゃありませんが「10年以上築き上げたものを、簡単に教えるわけにいかない」とお断りさせて頂いています(笑)。でも、僕みたいな変わり者が出てきたお陰か、格闘技業界でバンデージの重要性が増している印象があります。
これまではバンデージなんて何処のメーカーでも一緒、という考えから「どこのバンデージメーカーなの?」と訊かれることも増えてきた。Facebookに自分が巻いた選手のバンデージを乗っけるトレーナーも増えたので、それだけでも進化している。でも、まだまだ後進国ですけどね。
――今後の目標を教えてください。
永末 井上尚弥選手、田中恒成選手、那須川天心選手のお陰もあり、包帯メーカーからのスポンサー契約もできるなど、自分の知名度は上がってきました。あとは自分の技術をもっと高めて、スティッチのように世界のバンデージ巻きのスペシャリストの中で勝負がしたい。選手も戦っているんだから、自分も戦わないと。今はまだ井の中の蛙ですから。
〈取材・文/日刊SPA!取材班〉
そんな永末氏がバンデージを巻く三階級王者・田中恒成選手のインタビューが、週刊SPA!7月9日号(7月2日売り)の巻末インタビュー「エッジな人々」に掲載される。無敗の王者ながら自身を“無名”と語る、孤高のチャンピオンの本音が明らかにされる!
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