更新日:2023年03月28日 09:32
仕事

定年前と再就職後で収入差は?シニア転職の実情

52歳のとき一念発起、前職とは異なる業界で活躍

 2人のように、これまでの経験を生かして同業他社の新たな職場で活躍している人もいれば、前職とは異なる業界で活躍している人もいる。最後に紹介する藤原幸雄さん(67歳)もその一人だ。 「防衛大を出た後、55歳で定年を迎えるまで自衛隊にいました。国家防衛の担い手として一区切りがついたあとは、何か別のプロを目指したいなと定年の数年前からずっと考えていました」
藤原幸雄さん

「80歳まで働くとすれば、まだまだやれることはたくさんあるはず」藤原幸雄さん(PE-BANK・67歳)

 52歳のとき、一念発起した藤原さんが目標にした次のプロは、なんとITエンジニア。50歳でも技術の進歩についていくのが厳しい業界になぜ自ら飛び込んだのか。 「学生時代はコンピュータの勉強をしていて、卒業研究もコンピュータ関連のテーマを選びました。自衛隊でも希望したのですが、残念ながら縁がなかった。それならこの機会に勉強し直して、コンピュータ関連の資格を取ろうと考えたんです。猛勉強の末、当時のスキルでは難しいと思っていた資格が取れたので、セカンドキャリアはITエンジニアに決めました」  定年前からの入念な準備と努力が資格取得につながったが、就活では苦労をする。 「何社か面接まで進んだのですが、実務経験がなかったので、なかなか採用されなくて……。当時、就職活動を行っていた長女と励まし合ったのを覚えています(笑)」  そして10社目で採用を勝ち取り、退職後すぐにITエンジニアとしての道を歩き始めた。65歳までの10年間、会社勤めをしたのち、フリーのエンジニアとして現在登録している会社と契約。67歳となった今も、最高齢のエンジニアとして活躍中だ。

シニア転職で今までとの収入差は?

「雑務がなく、目の前のことに専念できる今の仕事は、現場で働きたいと思っていた私にとって天職です。自分は50代にイチから始めて新しいことができたのだから、それよりも若い世代の方にできないはずがない。『何をやりたいか』を突き詰めて、次のキャリアを考えることをおすすめしたいです」
藤原幸雄さん

「これまでお世話になった人や社会に恩返しがしたい」という気持ちが藤原さんの仕事の原動力。報酬がもらえるレベルの仕事ができなくなったときは、ボランティアとして恩返しを続けていくつもりだとのこと

 今年からスキーの指導員も始めたという藤原さんの底なしのチャレンジ精神は大いに見習いたいところだが、気配り上手な一面も。 「普段は高圧的にならないように話していますが、若いコと自衛隊の体験入隊に参加したとき、つい現役時代の硬い話し方になってしまって……。普段とのギャップにみんな驚いていました(笑)」  ちなみに、定年前と比較した現在の収入を聞くと、勝さんは「80%前後」、中尾さんは「65%」、藤原さんは「40%程度」とのこと。やはり現役時と同等に稼ぐことは相当難しい。だが、心身が満たされたまま70歳まで稼ぎ続ける方法論は実は多彩のようだ。 <取材・文/週刊SPA!編集部> ― 70歳まで稼ぐ超実践ガイド ―
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