仕事

「中年会社員は“笑いのカツアゲ”が多い」元お笑い芸人が指摘する組織の問題点

自分が若い頃の感覚を部下に押し付けてしまいがち

 また、近年大きな問題となっている職場でのパワハラ・モラハラの要因として、会社組織で長年揉まれてきた会社員特有の“経路依存性”を指摘する。 「簡単に言うと、過去の歴史を繰り返したくなるという働きが経路依存性です。かつて生産性を上げるためがむしゃらに働いて、パワハラ社会で新人時代に教育されてきた人は同じように部下に教育してしまいがち。  また、職場である程度の立場になった人は若い頃と同じ感覚で部下に発言していないか、注意したほうがいいです。軽い気持ちで言った言葉でも、同僚に言うのと部長が新人に言うのとでは響き方も違うので。想像以上に傷つけてしまうこともあります。  また、経路依存性は学習性無力感との関わりでも注意ですね。人は成長だけではなく無力さも学習します。例えば、サーカスのゾウは子供の頃から鎖に繋がれていて、逃げようとしても逃げられない。大人になって力がついた時に、本来は逃げられるはずなのに無力を学習しているので『どうせやっても無理なんだ』と思い込んでしまう。そんな無力を学習した人が部下を持つと経路依存性によって部下にも無力を学習させる。『頑張っても何も組織は変わらない』とか」 パワハラ 中北氏によれば、こうした問題を打開するには自分自身の無意識のバイアスをまず認識することが第一歩になるという。 「結局、無意識のバイアスを壊すには自分がそういう人間であることを理解すること。何かコミュニケーションエラーが起きている時、自分の変な感じから起きていないか、まず一回よく考えた方がいいと思いますね」

実現可能な理想の自分を知るために…

 正しい自己理解は先述した職場コミュニケーションの様々なリスクを軽減させるだけでなく、“ウケる”スキルを発揮するためにも大切な要素になるようだ。 「コメディケーション・お笑いは何かをズラして考える、面白く捉え直すという思考法です。何度も活用することでだんだん身につくもので、筋トレと一緒で個人差もあります。  長所は人から尊敬されるべきポイント、短所は人から愛されるポイントとして活かすのがコメディケーションの前提ですが、自己認知が低い人は何を言っても、共通認識というフリからズレてしまうので身につけるまで少し時間がかかります」  長所や短所などこうした自己認知の問題を解決するためには、“自分から見た自分”と“自分が将来なりたい自分”、そして“自分が気づいていないけど他人が知っている自分”という3つの視点から自己を知り、自己プロデュースすることが肝心とのことだ。 「本来、自分がなりたい姿というのはこの3つの自分の延長線上の実現可能な姿しか描かないと思うんです。もちろん、できるだけワクワクするようなものがいいと思うんですが、自己認知がズレている人は延長線上にはない実現不可能なものを描いてしまいやすい。特に相手から見た自分という“盲点の窓”を認識することですね」  自分の“盲点の窓”を把握するためには、まずは家族や同僚、友人など人の声に耳を傾けるのが一番の近道となるという。 「僕の場合、芸人時代は自分がコミュ力あると思わなかったんですよ。芸人ってコミュニケーションに対してPDCAを回し続ける変な職業で、基本周りがみんな芸人でコミュ力高いから埋もれていた。でも会社で働き始めてしてからコミュ力高いと言われ、自信になりましたね」<取材・文/伊藤綾、撮影/藤井敦年(人物・中北朋宏)>
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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