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Uber Eats配達員の陥る苦境。交通事故に遭っても自己責任、海外ではデモも発生

海外では重要な「働き口」に

 Uberを始めとするライドシェアサービスのオペレーションの仕組みは、国内の地方間格差が激しい新興国では大いに受け入れられている。  日本でも30~40年ほど前までは農村部から都市部への出稼ぎ労働者が多かった。中国や東南アジア諸国では今でも「国内出稼ぎ」が珍しくなく、バカンスシーズンになると旅客機や鉄道は規制の出稼ぎ労働者で埋まってしまうほどだ。農繁期には故郷へ帰って収穫を手伝い、農閑期に都市部へ出るという人も多い。だが、都会にやって来たからといってすぐに職を得られるわけではない。最悪、出稼ぎ労働者同士で数限りある雇用を奪い取る事態にまで発展する。  そこでライドシェアサービスと、そこから派生した飲食デリバリーサービスの出番である。自動車があれば一番いいが、とりあえず原付か自転車さえ用意できれば誰でもライドシェアサービスのスタッフとして働くことができる。しかも農村部からやって来たばかりで、その都市の地理に通じていない者でもGoogle Mapとの連携機能を使えば正しい道順通りに仕事を完遂できる。  出稼ぎ労働者に働き口を与えることができるという点では、ライドシェアサービスは非常にありがたいものだ。ところが、ライドシェアサービスとの契約は「雇用」ではない。先述のように、ドライバーや配達員はあくまでも「下請け」で仕事を請け負っているに過ぎないのだ。  現在、日本でもUber Eats配達員による労働組合の結成が進められているが、それには上記のような背景があることを考慮する必要がある。

インドネシアではデモも発生

 ASEAN諸国で最も巨大な経済規模を誇るインドネシアでは、ライドシェアサービスが普及している。ライドシェアサービスがあるということは、当然ながら同一プラットフォームの飲食デリバリーサービスもあるということだ。インドネシアの場合はGrabとGo-Jekというサービスが市場をほぼ二分している。  8月5日、インドネシアの首都ジャカルタのGo-Jek本社前で契約ドライバー及びライダーたちによるデモが発生した。これは評価に応じたインセンティブの額やその基準を巡るものだ。繰り返すが、ライドシェアサービスと契約しているドライバーやライダーは被雇用者ではない。だから日本で言うところのベア引き上げを要求することはできず、あくまでもインセンティブや臨時ボーナスを巡るやり取りになってしまう。  ライドシェアやオンライン飲食デリバリーの仕組みは極めて利便性の高いものであるが、その一方で事故に怯えながら不安定な日々を送る配達員がいるのもまた事実だ。<文/澤田真一>
ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー
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