更新日:2023年04月18日 11:26
仕事

コンビニ強盗の恐怖…店員が目撃した犯行の一部始終

周辺で強盗が多発、迫り来る恐怖との戦い

  コンビニ 筆者はこの日も深夜帯にワンオペで入っていた。この時期、A店付近の一帯はコンビニ強盗が多発しており、駅の近くの店舗から順に襲われていた。  とはいえ、警察も黙っていない。昼間から巡回しており、夜中にも2回やってくる。  夜中2時にパンを納品していると、足元に人の影が……。嫌な予感がして顔をあげると、巡回中の警察官だった。 「なんでこの店舗は危ないのに一人体制なのだね?」 「それは本部と店長に言ってくださいよ。人件費削減でしょうが、この辺は環境が最悪ですよ」  しばらく経ったある日、夜中に本部から電話がきた。 「駅前の店舗が先ほど強盗に遭った。まだ犯人が捕まっていないので、余計な仕事はいいから注意するように」  A店は道路から少し高い位置にあり、歩行者からは店内が見えない。そもそも深夜は誰も通りを歩いていないのだ。そろそろ強盗がくるのだろうか……。こんな時は、立ち読みでもしてくれる人がいたら少しは防犯対策にもなると思うのだが、それも叶わない。  次第に筆者もストレスと疲れからおかしな精神状態になっていき、さらに昔は性格的にイケイケだったので、もしも強盗が襲ってきたら“ヤッてやる”と意気込んでいた。  まず、レジに侵入されないためにバリケードを作ろうと思った。納品は朝までない。大量の本をレジの出入り口に置いた。スタッフ専用口にもカギをかける。現金は残さない。そして、丈夫そうな傘を用意して素振り。気を抜いたらダメなので構えた。  しばらくすると緊張からかタバコを吸いたくなり、店の入口にある灰皿まで傘をいっしょに持っていく。吸い終わり、傘を振り回していると、顔なじみのゴミ収集のおじさんがやってきた。筆者の只ならぬ雰囲気に「どうしたの?」と声をかけてきた。事情を説明すると、よほどヤバい表情をしていたのだろうか。 「私が強盗だったら、あなたの入っている日は絶対に来ないね(笑)」

ついに強盗が襲来…犯行の一部始終

怪しい男 筆者は週4回シフトに入っていた。店長は1回だったのだが、その日に事件は起こった。朝9時、自宅にいた筆者の携帯電話が鳴る。店長からだ。開口一番に言う。 「浜さん、ヤラれました」  その日の夜、店に行くと店長が防犯ビデオを観ながら解説してくれた。  時刻は夜中2時。店長は呑気にバックヤードで漫画を読んでいた。警戒心はゼロだ。レジにバリケードも作られていない。  すると突然、大きなマスクをした二人組の強盗が、それぞれ出刃包丁と包丁を持って侵入してきた。店長は驚いて「あ、あ〜、あっ!」と奇声をあげる。 「レジを開けろ!」  強盗は二人とも60歳前後だろうか。店長は慌ててレジを開けるが、現金は3万円ぐらいしか入っていなかった。想定よりも少なかったのだろう。強盗は激高する。 「金庫を開けろ!」  そして、店長をバックヤードに連れて行くと「鍵を開けろ!」と叫んだ。  現金が奪われても保険でどうにかなる。それよりも命が重要だ。しかし店長は素直に開ければいいものを「僕、バイトなので鍵を持ってないです。すいません」とウソをついた。 「ふざけんな!」  しばらく強盗は怒鳴ったあと、レジに入っていた3万円ぽっちを奪って逃亡。店長は腰を抜かしている状態だったが、根性で防犯ベルを鳴らす。その1分後、巡回の警官が入ってきて叫んだ。 「やられたか、ちくしょう!」  そこで店長は渋い顔でビデオを切った。  この事件は新聞にも小さく掲載された。3万円というわずかな金額のために、相手が激情して手にしていた包丁で刺されていた可能性もある。店員としてはたまったものではない。筆者がシフトに入っている日ではなくて良かったと心底思ったのであった。<取材・文/浜カツトシ>
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