そこで金井さんは、苦肉の策として、なんとレジ前にタバコのカートンを「メロン積み（※）」状態にしてみたという。 （※同人誌などを扱う総合書店『メロンブックス』が始めた陳列方法。イチ推しの新刊などを天井に届くほど山積みにしたり、販促用のPOPでド派手に飾り立てたりする） 　秋葉原通いが趣味の彼女には「メビウス」が「BL本」にしか見えなかったのだろう……などと言っている場合ではない。それって、大丈夫なのだろうか。 「メロン積みして売れたの？」と聞くと、「あんまり高く積むとレジでお客様の顔が見えなくなるからそこまで目立つようにはできなくて……本当はあと1メートルぐらい高くしたかったのに泣く泣く断念したの」と言うから驚きだ。 　しかし、即座にスーパーバイザーから「お客様が手に取りやすいように元に戻して普通に積んで！」と怒られたという。「普通じゃ売れません！」と口答えをしたという彼女だが、スーパーバイザーが元に戻すように言ったのは「普通」を重んじたからではない。 　実は、コンビニでのタバコ販売については、タバコメーカー各社との協賛や契約などの関係や法律でその陳列方法や未成年への影響を考慮し、細かく規制されているためであった。 　そして普通に戻した結果、タバコは売れ残った。 　以降、そのスーパーバイザーもタバコ値上げの度に無茶な仕入れを指示してくることはなかったが、消費者はそこまで「値上げ」に左右されないということなのかもしれない。今回の増税も、「支払額の2～5%がポイントやキャッシュレス決裁でキャッシュバックされる」という施策が検討されている。焦って駆け込みでまとめ買いをする人はいよいよ減っていくだろうから、小売店には金井さんのような追い詰められ方をしないで欲しいと願うばかりだ。＜取材・文／松本果歩＞インタビュー・食レポ・レビュー記事・イベントレポートなどジャンルを問わず活動するフリーランスライター。コンビニを愛しすぎるあまり、OLから某コンビニ本部員となり店長を務めた経験あり。X（旧Twitter）：@KA_HO_MA