日々、新たな手口が生まれている特殊詐欺。被害者のほとんどが、進化する詐欺に追いつけない高齢者たちだ。その現状に迫った。

イラスト/オーグロ慎太郎
老親を狙い撃ち!進化する詐欺の手口
社会全体で啓蒙が進みながらも、被害の絶えない特殊詐欺。なかでも、
振り込め詐欺は被害者の96.9%が高齢者。悪徳商法被害者対策委員会会長の堺次夫氏は「これは氷山の一角で、表に出ていない被害はさらに多い」と語る。
「被害者は必ず『まさか私が』と口にします。
認知症などで判断力の低下している人ばかりが狙われると思われがちですが、誰にでも起こりうるんです」
偽のLINEアカウントで子供を装うなど、手口も巧妙化している。詐欺グループの元メンバーは、その仕組みをこう解説する。
「ポストからカードや電話会社の明細を盗み、個人情報を調べるんです。『父さんの電話番号は○○で合ってるよね? 振込先を送るから……』と、会話やメッセージにその情報を盛り込んで安心させる」
また、
被害者の84.6%が高齢者の還付金詐欺も手が込んでいる。
「役所を装って電話でATMへ誘導するだけでなく、
透かしの入った手帳を偽造して、直接家を訪ねる事例もあります。直接話すと、つい信用してしまう」(堺氏)
スマホやパソコンを利用する高齢者は詐欺の格好の標的だ。

運送業者を騙った迷惑メールは急増中。
「80代の母が、運送業者を装った詐欺に騙されました。ネットで調べれば、すぐ詐欺だとわかるけど、年を取ると難しい。偽の不在通知メールのリンクを押してしまい、アプリがインストールされて、自動的に電子商品券を購入していました」(43歳・男性・飲食店経営)
また、会員制恋愛アプリなどが高齢者をターゲットにすることも。運営者の男性に話を聞くと、悪びれるどころか開き直る始末だ。
「サクラの男性が女のフリをして、課金させ続けるんです。ただ、相手の話は聞きますし、ある意味“介護”しているようなもの。悪いのはロクに親と話さず、寂しい思いをさせている子供ですよ」

スマホを使う高齢者のなかには、被害に遭っていることにすら気づかない人も少なくない