更新日:2019年10月04日 12:01
スポーツ

エアレースで優勝!室屋義秀・46歳が語る「僕たちの世代がやるべきこと」

「自分たちは被害者」と思わないこと。物事は捉え方

’73年生まれ、団塊ジュニア世代ど真ん中の室屋。かつては失業同然の暮らしがあった

 今や、これまでのエアショーに加えて、次世代への航空文化の継承など、エアレース以外にも多様な活動を展開する室屋は、’73年生まれで就職氷河期のピークとも言える団塊ジュニア世代だ。この世代は、バブル崩壊後の厳しい就職環境のツケで、今も不安定な職や非正規雇用を余儀なくされている人が多く、社会問題化している。  実は室屋も、大学を留年し、ボランティア同然のグライダー講師というアルバイトからキャリアをスタートした過去を持つ。そこからはパイオニアとして自ら道を切り拓いてきたが、それだけ多くの苦労も乗り越えてきた。この氷河期世代について思うことを尋ねた。 「難しい質問ですけれど、’73年生まれは現役世代では最も多くて、今われわれが日本を支える世代なんですよね。だから、この世代がシステムをつくっていかない限り、自分たちがリタイアする20年後ぐらいに一気に次世代に負荷がかかってしまう」 「そもそも、われわれが就職氷河期だったって事実は、今の子どもたちにとっては関係のないこと。それなら、どうやったら生きやすい世の中をつくってあげられるのか考えて行動しないと。『自分たちは被害者』と思わないことです。どちらかというと、すごい加害者になっていく世代ですから。そうすると、世の中の見え方も変わってきます」 「ぼくは物事って捉え方だと思ってるんです。コップに液体が半分入ってるとするじゃないですか。例えば、お酒だったら半分しか入ってないと思えるけど、青汁だったらあと半分も飲まなきゃいけないと思うとか。同じものでも、捉え方によっては、まったく変わる」  受け身ではなく能動的に捉えて、できることをしていくことで、周囲が、世の中が変わる。空ラボもその一環なのだ。多くの子どもたちとも接してきたからだろう。まるで先生のように、室屋は柔らかく噛み砕いて語る。  最後に、レースへの熱い想いはなおも変わらないということ、「1ポイント差が悔しい」と語るほどの燃え尽きないチャレンジ精神の源について聞いた。すると、ちょっとバツが悪いような顔をのぞかせて語った。 「子どもがゲームを一生懸命やるじゃないですか。あれと同じなんですよ。こうして強くなったし、勝てる位置にいるから、どんどん面白くなっちゃって。ワールドチャンピオンも取ったけれど、飛ぶのが好きだし、自分を追い込んでいって超えていく体験は、遊びみたいなもの。ライバルたちと切磋琢磨できるのも極限に面白い。だから燃え尽きるわけもないんです」  達観した大人で先生のようでもあり、本気で遊びが止まらない子どものよう。新しい活動は年始にもまた公表したいという。今後も室屋の活動には、多くの人が魅了され、影響され、未来へと繋がっていく。

室屋の新たな挑戦が始まる

取材・文/松山ようこ 撮影/遠藤修哉(本誌)
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エアレース終了後、今後の活動はホームページで告知される
室屋義秀公式ホームページ
http://www.yoshi-muroya.jp/
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