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エアレースで優勝!室屋義秀・46歳が語る「僕たちの世代がやるべきこと」

優勝を喜ぶ「チーム室屋(Team Falken)」のメンバーたち @ Red Bull Content Pool

 9月7~8日に千葉・幕張で行われた最後のレッドブル・エアレースで、劇的な逆転優勝を果たした室屋義秀が、特別インタビューに応じた。’09年の初参戦から、エアレース唯一の日本人パイロットとして奮闘し、’17年にはワールドチャンピオン(年間総合優勝)も達成。今季は惜しくも1ポイント差で、総合2位に終わった。  「この1ポイント差が、今後のすごいモチベーションになりました」と悔しそうに苦笑いすると、次の舞台へのやる気をも垣間見せた室屋。これまでにも、エアレースへの参戦だけでなく、エアショーをはじめとした「空のフィギュアスケート」と呼ばれる曲技飛行の活動も行い、近年は次世代の育成にも力を入れる。

@Red Bull Content Pool

 「空ゆくサムライ」と世界に名を響かせ、航空業界のパイオニアとして日本を牽引する室屋は、今後どんな活動をしていくのか。

「こんなやり方は無理があるんじゃないの?」教育関係者が驚く航空教室「空ラボ」を主宰

 今年からはじめたのが、小中学生を対象にした航空教室「空ラボ」。教室は、室屋の拠点である福島県のふくしまスカイパークにある立派な新展示場「Hanger 1」で、曲技飛行機をはじめ展示されているものは何でも使っていいという。  ここでは、小学校3~4年生、小学校5~6年生、中学校1~2年生とクラス分けをして、各々が航空をテーマに何をやりたいか決めていくところからスタートする。目標を設定し、実現するべく仲間と共同作業するのだ。これは、室屋がやってきたことを当てはめただけという。  「自分は本当に何が好きで何をしたいのかって、実はわかっていない子がすごく多くて。でも、うまく聞いてあげると、いろいろと話してくれるようになります。大人はちょっとファシリテート(整理)するだけ。指示もしなければ、指導もしない。でも、聞かれたら教えるというのだけがルールです」と室屋はユニークな方針を説明する。  航空がテーマというだけで、すべてを子どもたち自身が決めていくという空ラボ。教育関係の人からは、「こんなやり方は無理があるんじゃないの?」とよく言われたという。ところが、子どもたちは、見る間にポテンシャルを発揮する。 「例えば、5~6年生のクラスでゴムが好きな子が、『ゴム動力で飛行機を飛ばしたい』と言い出したり、『飛行機ってどうやって飛ばすんですか?』と聞いてきたり。すると、われわれは航空のプロなので、なんでも教えられます。『じゃあ空力のプロに聞いてみるね』ってブラジルの仲間に電話して、本物のプロにプロペラの推力を計算してもらうこともありました」  そうして、航空をテーマに空ラボでしかできない議論が行われ、みんなで決めた目標を実現するためのプロセスを見出していくのだという。

「議論した後に出る答えは1つ。決めたらそれで進むのがチームというもの」

 「自分がふだんやっていることを教室に当てはめただけ」というように、事実、エアレースの「チーム室屋」も、優勝という目標を実現するべく、チームで議論を重ねていく。最後のエアレースとなった千葉大会では、こんな裏話を披露してくれた。

ワールドチャンピオンシップ2019シリーズ2位のトロフィー(左)と’19年千葉大会の優勝トロフィー

 台風が次々と発生する状況下だったため、コース取りのプランはA、B、Cと設定。気象条件が目まぐるしく変わることから、それぞれのプロがそれぞれの立場で言い合い、細かな意見の対立もあったという。 「チームである以上、それぞれのロール(役割)があるんですね。ぼくもパイロットとして意見はいっぱいある。遠慮してしゃべらないのは正解ではないと思うので、いろんな意見を出します。飛ぶ前に各プロフェッショナルが徹底的に議論をするんです」 「もめているようにも見えるかもしれないんですが、議論を長くやっていって、最後に出てくる答えは1つしかありません。そうやって決めたら、それで進むのがチームと思っています。だから、子どもたちにも決定までの間は、十分な議論をするのが重要かなと思うんです」  「空ラボ」は、航空を切り口に、いかに自分のやりたいことを仲間と実現していくかを目指す。言いたいことを言い合って物事を調整していくチーム形成は、我慢が美徳とされがちな日本にはない、グローバルで実質的な場になるのだろう。
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「自分たちは被害者」と思わないこと。物事は捉え方
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エアレース終了後、今後の活動はホームページで告知される
室屋義秀公式ホームページ
http://www.yoshi-muroya.jp/
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