スポーツ

ラグビー決戦に向け舌戦開始!? 南アフリカは4年前のリベンジ、日本は返り討ちを約束

 準々決勝の大一番を控えた日本代表、南アフリカ代表の両チームがそれぞれ都内で記者会見に応じた。  リーチ主将は3度目のVを狙う強豪だが、4年前に奇跡を起こした、南アフリカとの戦いに「週の初めは南アフリカが怖く見えたが、自分たちのプランを理解し、どう崩すか考えるとワクワクしてきた」と攻略に自信をみせた。

笑顔で記者会見に応じる、福岡堅樹(左)と中村亮土

 スコットランド戦で初先発し、2トライ。WTB松島幸太朗ともに「Wフェラーリ」の称号を得たWTB福岡堅樹は、南アフリカの小兵選手、コルビ(170cm)が2人(福岡175cm、松島178cm)を「小さなパッケージのダイナマイト!」と絶賛していたことを聞くと、「リオ五輪7人制ラグビーでも試合をやった相手。サイズのない選手がどうやって世界のトップレベル戦っていくか、強みを出していくかを意識してきたので、お手本となるプレーをしていた選手に(自分たちを)意識してもらえているのは嬉しい」と笑顔で語った。  また、4戦連続で先発で、一緒に会見に臨んだCTB中村亮土は「まだまだ、これくらいじゃ図りきれない強いジャパンを見せられる。日曜日を楽しみにしてほしい」と自信たっぷりの表情で語った。  また、南アフリカのプレースタイルは9月のテストマッチやその後の分析で、熟知しているといい、ハイボールを蹴ってフォワード戦に持ち込もうとするだろう相手戦術の対策に自信を見せた。

南アフリカ、コリシ主将の見事な会見

 一方、来日からひと月近くを日本で過ごして、東京スタジアムに初見参となる、南アフリカの選手スタッフは、口々に、そして折に触れて、日本への感謝を口にする。おもてなし、熱烈なファンのサポート、人々の親切な対応への感謝は、会見でも随所に聞かれた。

南アフリカのコリシ主将(左)、SOのポラード(右)ら

 そんな中、スプリングボックス史上初の黒人キャプテンとなったフランカーのシヤ・コリシは、(ともすれば荒っぽい言葉遣いをする黒人スポーツ選手にない)適切な表現を随所に混ぜながら、約15分の記者会見を丁寧に対応してみせた。  会見中盤、ある外国人記者がこんな質問をした場面があった。 「日曜日の準々決勝は、とても大きな、重要な試合になると思いますが……」  質問の意を汲んだコリシ主将は、クリーンな英語でこう答えた。 「日曜夜の試合がどれほど重要で、どれほど大きな試合なのかは、(メディアや他の人から)指摘されなくても選手たちはよく理解している。なぜなら……このチームにいる素晴らしいヘッドコーチやコーチ陣が、僕たちにその大切さを何度も教えてくれているからね」  やもすれば、4年前の日本に喫した歴史的敗戦をも含んだ挑発的な質問とも受けとれたあの場面で、コリシ主将は、学のある層(英語で言うclass)が発するかのような適切(proper)な英語で見事に切り返してみせた。  取材班の記者は長年、アメリカで野球やバスケットボールの取材経験があるが、失礼ながら黒人アスリートがこれほどまでに正しい英語を使いこなしてメディアに対応する姿をはじめて目にした。Fからはじまる汚い言葉や、第三者を侮辱する表現は、いくらでも思い出せる。  幼少期、決して裕福とは言えない環境で育ったコリシ主将だ。大一番のこの記者会見に登壇するまでの道のりは、長く苦しかっただろう。身体のトレーニングだけでなく、心のトレーニングにも充分な時間を割いてきたことが、明らかに伝わってきた会見だった。  会見も終わりに差し掛かる頃、コーチが言った。 「このスタジアムは、これまで戦ってきたどんなピッチよりも美しい。もしかするとここは、今までで最高のスタジアムかと思う」 「でもね……。」とコーチは続けた。 「キックを多用するかとか、後半の選手交代についてとか、作戦に関しては答えないよ(苦笑)。ただこれだけは確実に言える。この試合が、非常にタフな一戦になることは間違いない。でも、我々は十分な準備ができた」  控え8人中、FWを通常より1人多い6人にして得意のフィジカル勝負に出るとみられるスプリングボクス。  4年前のブライトンでは32-34で敗れ、ひと月前の熊谷では41-7と完勝したスプリングボクスが、最高のスタジアムで果たしてどんな試合を見せてくれるのか。  日曜の夜が、今から待ちきれない。 取材・文・撮影/ラグビーW杯取材班
おすすめ記事