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ラグビー日本代表「ベスト4」へのハードルは?この強さは奇跡じゃない

’15年の南ア撃破に次ぐ史上最大の番狂わせ!

ラグビー日本代表「スポーツ史上最大の番狂わせ」と言われた’15年W杯の南アフリカ戦から4年、またもやラグビー日本代表が歴史を塗り替える大金星をあげてくれた。ご存じ、9月28日のアイルランド戦だ。  前半はアイルランドの巧みなキック戦術に振り回され、2トライを奪われたが、司令塔のスタンドオフ(SO)田村優選手が3本のペナルティゴール(PG)を決めて反撃。後半は終始、日本のペースに。FW姫野和樹選手の力強いランを軸に休まずアタック。連続攻撃からの素早いパス回しで、後半18分には日本中が待ち望んだ初トライを獲得した。その後のコンバージョンも着実に決めて、さらにPGを追加。精度の高いディフェンスで後半0得点に抑え込み、世界ランキング2位の優勝候補から初勝利をもぎ取ったのだ。  この歴史的勝利は連日「奇跡を超える奇跡」「エコパ(スタジアム)の奇跡」などと報じられ、空前のラグビー・フィーバーが巻き起こっている。だが、「奇跡」という表現は、桜の戦士に対して失礼かもしれない……。現場で取材していたラグビー担当記者が興奮気味に話す。 「勝敗が決した直後、プレスルームでも感動して涙を流す記者がいました。けど、試合後のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は『静岡の衝撃などと言われてますが?』の質問に対して、『しっかりプレーできたのは、このスタジアムでできたから』と地の利があったことを匂わせ、3年前から今回の対戦に向けて準備していたことを明かしました。  だから、『ゲームプランどおりに試合を進めることができた』と。これは選手も同意見でした。前半に2トライ奪われましたが、『自分たちの形を崩されたわけではない』と話していた。日本はしっかり勝ちのイメージをつくって試合に臨んでいたということ。意外にも、イギリス人記者も『日本が強いと知っていた』と話していました。  4年前に南アに勝利したことで海外チームの日本に対する評価は大きく変わった。アイルランドに勝利することは奇跡などではなく、予想可能な結果だったのです」  ジェイミーHCが言及したように、地元開催のアドバンテージは確かにあった。日本が中6日で第2戦に臨んだ一方、アイルランドは中4日。疲れが抜け切らなかった可能性もある。だが、日本が予想以上の力を発揮したのは間違いない。長年ラグビーを取材し続けているスポーツジャーナリストの生島淳氏が話す。 「ディフェンスでもぎ取った勝利と言っていいでしょう。中でもFW堀江翔太選手はスクラム、スローイン、フィールドプレーとあらゆる場面で活躍。あのアイルランドとスクラムを五分で組めたのは驚きでした。  ラグビーには『30 feet on the ground』という言葉があります。選手15人の30本の脚を意味し、ひとりがタックルで倒れたら2本のマイナスとなりますが、すぐに起き上がれば30本に戻る。日本はこれを忠実に守って、アイルランドは疲れもあったのか足が止まっていた。その差が勝敗を分けたと見ています」  同じくスポーツライターの栗原正夫氏も日本のディフェンスを評価。 「長年、日本の課題はパワー不足にあると言われていましたが、FW陣はその不安を払しょくする活躍を見せたといっていいでしょう。アイルランドは強力FWを軸にボールをキープしながら防御を突き崩すスタイルでボール保持率が高いのですが、今回の対戦では日本の保持率が上回りました。  全員が高い集中力と規律を80分間維持し続け、1度タックルして倒れてもすぐに起き上がって、時に2人がかりのダブルタックルで相手の攻撃を跳ね返しました。なかでも、目立ったのは2戦連続の先発起用に奮起した姫野選手。果敢なタックルに加え、ボールキャリー(ボールを持って前に運ぶ)数でチーム1位の15回を記録したほか、終盤にはボール争奪戦で相手の反則を誘いピンチを救いました」
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ベスト4進出へのハードルも
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週刊SPA!10/8 号(10/1発売)

表紙の人/ 木村拓哉

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