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さようなら『アラサーちゃん』…8年間の連載終了に作家・道尾秀介が思いを語る

 2011年にスタートし、切れ味鋭い4コマで多くの読者を虜にしてきた『アラサーちゃん』が、ついに完結。『アラサーちゃん 無修正7』(最終巻)が発売された。8年間の連載終了に作家・道尾秀介氏が『アラサーちゃん』への思いを語る。

『アラサーちゃん無修正7』

アラサーちゃん最終回によせて

 夏の終わり頃だったか、ある非常に真面目なNHK番組の収録に参加してきた。半日がかりの収録で、先輩作家の島田雅彦さんや高橋源一郎さんもいたのだけど、空き時間に雑談をしているとき島田さんが呟いた。 「『アラサーちゃん』が終わっちゃうね」  すると高橋さんも「もったいないよねえ」と身を乗り出してきたので、僕は大いに頷きつつ、自分がいかにあの作品のファンであるかをアピールし、大先輩であるお二人との距離をちょっとだけ縮めることに成功したのであった。  それを隣で見ていたディレクターN氏が、ひどく不思議そうに首をかしげた。 「……『アラサーちゃん』って何ですか?」  高橋さんが「えー」と驚き、島田さんが「駄目だなあ」と苦笑し、そのあと三人で代わる代わる作品についてN氏に説明したのだけど、そんなことをしながら僕は、さっき彼が見せたひどく不思議そうな顔について、無理もないなと思っていた。  小説はもちろん、数々のオペラ作品や人生論等々を世に送り出し、芥川賞の選考委員まで務めている島田雅彦さん。言わずと知れたポストモダン文学の牽引者である高橋源一郎さん。二人の前でさっきまでビビッていたエンターテインメント作家。そんな三人が急に、「○○ちゃん」というタイトルのマンガ作品について生き生きと語り合いはじめたのだ。 『アラレちゃん』や『あさりちゃん』のことを懐かしく語り合うというならまだしも、『アラサーちゃん』という、週刊誌に現在連載中の作品について。
アラサーちゃん

『アラサーちゃん無修正』より

 ところでそのとき僕たちの口から一番よく出た表現は「面白い」だった。こんなに曖昧で抽象的な言葉はないけれど、具体的にどこがどう面白いのかを説明する気分にならなかったのはたぶん、大好きな料理を「美味しい」と言う気持ちと似ていた。  異性、同性、街、映画、小説、マンガや料理。大好きなものほど、その魅力を具体的に説明する気にならない。いや説明してもいいのだけど、砂場の砂粒を数えるみたいに、どうせキリがないからやらない。 『アラサーちゃん』、長い間ありがとうございました。  作者の峰さん、登場人物の皆様、お疲れ様でした。  このような場をいただけて、僕は光栄です。  連載第一回から読んで、読むほどにやめられなくなって、うっかり『週刊SPA!』を買い忘れたときは慌ててバックナンバーを取り寄せて、コミックの発売イベントに行って、ドラマ化の記念パーティに参加して、サイン会に並んで、そこで描いてもらった直筆の絵に感動して……楽しい八年間だったな。  さようなら、『アラサーちゃん』。  ありがとう、『アラサーちゃん』。  大好きでした。 【道尾秀介】 ’75年、東京都生まれ。作家。’04年、『背の眼』でホラーサスペンス大賞特別賞を受賞し、デビュー。’11年、『月と蟹』で直木賞受賞。最新刊『いけない』(共に文藝春秋) <文/道尾秀介>
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アラサーちゃん&女の事件簿を総まとめ
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『アラサーちゃん 無修正7』(最終巻)

遂に、アラサーちゃん完結!?

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