更新日:2023年04月27日 10:41
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「そんなに俺の給与が不満か」と激高…住民票の旧姓併記でモメた家庭

実家に帰ると両親や親戚から「夫婦別姓などけしからん」

田舎「嫁が旧姓でデザイナーをしているのですが、新制度が出来て早速新しい住民票に切り替えたんです。便利になったと私も喜んでいたのですけどね」  都内在住の会社員・松本慎一さん(30代・仮名)は、仕事が円滑になるならと、妻に旧姓併記制度を勧めた一人でもある。祝事があり、中部地方の山奥にある実家に松本夫妻が帰省した際に、なんとなく“そのこと”を話したところ、集まっていた母親、そして親族が真っ青な顔で松本さんに笑えない忠告してきたという。 「お前、そりゃ奥さんが離婚したいって合図だと、真顔で親戚のおじさんに言われたんです。母親も、嫁が夫の姓を名乗りたくないのは何か理由があるからだと慌てふためいてしまって。その場に居合わせなかった妻が戻ってくると、一族は黙りこくってしまいました。  私の知らないところで母が妻に『あなたは家系の恥』と攻め立てたり、逆に『あの子を見捨てるのか』と泣き落としたらしく、自宅に帰ってから嫁には泣かれて……。田舎の封建的な社会では『“夫婦別姓”などけしからん』という空気が確かにありますからね」  そもそも「旧姓併記」制度は、夫婦別姓とは全く異なり、その名の通りに、ただ「旧姓」を併記するだけの話。にも関わらず、上記のように誤解したまま大慌てする人も少なくはない。そして、この誤解をさらに拡大解釈し、都合悪く捉えてしまう人も――。

夫が「そんなに俺の給与が不満か」と激高

「雑誌などの制作業務をフリーランスでやっています。仕事によって旧姓と夫の姓を使い分けていたため、旧姓併記制度は便利だと思い、夫に相談したんです」 話し合い 神奈川県在住の浜本美由紀さん(仮名・40代)は、20代の頃からファッション誌などを舞台にライターや編集者、ディレクター、時にはカメラマンとして活動してきたフリーランス。数年前に夫と結婚したが、以前から請けていた仕事は旧姓で、結婚後に新たに請けた仕事は新姓を用いた。手続き上で、これらの仕事を一本化できるのならそれに越したことはないと思った。しかし、夫のヨミは斜め上を行くものだった。 「この制度は“女性の更なる社会進出”を目指したものだって説明をしたところ、夫が急に不機嫌になって『そんなに俺の給与が不満か』とグチグチ言い出すんです。ついには『仕事ばかりで子どもはどうするのか!』なんて。実は夫も同業者で、私の仕事や夢を理解してくれているものとばかり思っていたので、本当にガッカリです」  思わぬ形で夫の本音を聞かせられた浜本さん。こうした事例を見ていると、政府が音頭を取る「女性活躍」の御旗は、今なお国民の前近代的な感覚が根付いた土壌とは全く違うところで、悲しくひっそりはためいているようにしか思えない。<取材・文/山口準>
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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