「そんなに俺の給与が不満か」と激高…住民票の旧姓併記でモメた家庭
住民票やマイナンバーカードに「旧姓」を併記できる制度が11月5日に施行されて、間も無く一カ月が経つ。我々男性はもちろん、ごく普通に生活する国民にとっては「なんのための制度なのか」としっくりこない部分もあるかもしれない。
「勤務15年目での結婚でしたから、旧姓のまま仕事をしているほうが社内的にも便利で、会社もわかってくれていました。夫も、そのあたりの事情は知っていたはずなのですが……」
こう話すのは、都内の大手新聞社勤務の牧野優子さん(仮名・40代)。自身の記名記事を執筆することもあり、結婚後もなんとなく「旧姓のまま」で仕事を続けた。
特に旧姓へのこだわりがあったというわけではないが、結婚し姓を変えた女性の先輩が、行く先々で「結婚したんです」と説明しているのを見たり、名刺や社内のいたるところに貼ってあった旧姓ネームプレートを交換しなければならない煩わしさを考え、旧姓のまま仕事をしていただけだった。
仕事上では旧姓だが、私生活では夫の姓を名乗っていたこともあり、今回の旧姓併記制度のことを知った牧野さんは、さっそく住民票とマイナンバーカードの「切り替え」を行なった。これで便利になる、ただそれだけの考えだったのだが……。
「切り替えた後の住民票を見て夫が『なんだこりゃ?』と素っ頓狂な声をあげました。そんなに俺と同じ名字を名乗るのが嫌なのかとか、会社で旧姓を使っているのも本当は我慢していたのかとか、堰(せき)を切ったように不満を言い出して。タイミングが悪いことに、一週間ほど前から子どもの進路を巡って口論が続いていた時期で、夫婦仲も険悪でしたから」
後に誤解は解けたものの、夫の価値観にちょっとした疑問を抱かざるを得なくなったという牧野さん。お次も、封建的な価値観が「旧姓併記を認めない」とするパターン。
総務省のホームページによれば、「この政令改正は、社会において旧姓を使用しながら活動する女性が増加している中、様々な活動の場面で旧姓を使用しやすくなるよう、との累次の閣議決定等を踏まえ行われたものです」とのことである。
独身時代から活動してきたフリーランスの知人女性、そして社内では旧姓のまま仕事を続けてきたという知人女性からは「いちいち説明しないで済む」「煩わしさがなくなった」と概ね好評のよう。仕組み上の、というよりは「旧姓で活躍できる」というメンタル的な部分でのメリットを感じている人も多い印象だ。
しかし「女性の活躍」とくれば、旧来的な価値観を持つ人々とのズレが生じるのもお約束のようだ……。
旧姓併記制度で便利になると思っていたが…
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新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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