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純烈、紅白2年連続出場。“オッサンアイドル”はなぜこんなに愛されるのか?

 方法論や見せ方は臨機応変に変えつつも、ファンは一貫した姿勢があるからこそ応援する気になる。紅白に連続出場し、シングルCD10万枚超を売るグループと化しても、純烈は全国津々浦々の健康センターを回り続ける。  ビッグになろうが、ファンとの距離感は不変のまま。それによって、感じる温もりが常に同じであることの心地よさと信頼が生まれる。 「えー、ここから先は曲順が決まっておりません! というわけで……整理番号1番の方いますか? じゃあ、お好きな曲をどうぞ!」
純烈

中年の健康問題などの自虐ネタを交え“三の線”のトークを展開

 誰よりも早く並んだファンに、極上のお年玉が待っていた。自分がリクエストしたナンバーを、その場で純烈に歌ってもらえるのだ。  もちろん純烈名物のラウンド(客席を歩いて歌いながらファンとスキンシップを図る)も忘れていない。ステージ上では“三の線”のMCを展開していても、やはり目の前に来ると40代長身男性独特の色気が感じられる。  凱旋ライブ終了後、メンバーはファンとの写真撮影に朝5時までかけて応じた。一人ひとりに声をかけ、本当は眠気で目をこすりたいはずなのに笑顔で写真に収まる。

今年の紅白に向けて最速で稼働したグループ

 リハーサルがあったため、この日の4人は朝からNHKホールにいた。ほぼ24時間起きている状態であり、本音を言えば一秒でも早く横になりたかったはず。  それでも、シンドいのを承知で面白いと思えるほうを優先してしまうのが酒井一圭という男。そして、他の3人のメンバーだけでなくスタッフ・関係者までもが、そんなリーダーを面白がれる集団なのだ。  撮影会の行列が進むなか、大広間には雑魚寝するファンが一人、また一人……健康センターだから、そのまま朝まで眠れる。これもまた、純烈のコンサートならではの光景。  日本中の視線がカメラ越しに集まる大舞台から、畳部屋の大広間という振り幅を味わえるのが、酒井にとっては楽しいし、それをファンも楽しんでいる。そこにはハッピーしかない。
純烈

名物「ラウンド」ではメンバーが客席の全員と握手する

 おそらく純烈は’20年の大晦日に行われる「第71回紅白歌合戦」に向けて、どのアーティストよりも早く動きだしたグループである。元日0時の時報とともに、2月26日リリースの新曲「愛をください~Don’t you cry~」の告知動画を公開。凱旋ライブ会場でも購入予約を受け付けた。 「お客さんに買わせるという考え方じゃなくて、好きで楽しんでお金を使ってもらう」ための企画を、純烈と関わるスタッフで考える。無機質なCDを店頭に並べるだけで羽が生えたように売れる時代ではとうにない。  そこに血の通った思いが感じられるから、ファンは喜んで財布の紐を緩める。このように、純烈そのものがエンターテインメント業界におけるビジネスモデルとなっている。 「今年も10万枚を目指し、3度目の紅白を目指すなかでいいことも、良くないことも起こるかもしれない。でも、先人の皆さんもそういう中で頑張ってきたはずです。ただ、それらは副産物であって基本は健康センターや応援してくださる方々のところへ僕らから出向いて会いにいくこと。その中で、何かいいことが起こるんじゃないかという希望を持ってやっていきますのでよろしくお願いします」  凱旋ライブのラストは酒井のMCで締めくくられた。すでにノドはガラガラな状態。本当の「絞り出すような声」だった。  他のメンバーは、約300人との撮影会を終えるとようやく自宅に戻れたが、酒井はそのまま控室にあてがわれた畳の部屋へ泊まった。紅白に出ても、凱旋ライブが終わっても4人の子供を養う父親は、新年を迎えた我が家に戻れない。  そして元日の夕方にはネット生番組の出演が待っていた。健康センターの個室で怒濤の12月31日~1月1日を噛み締めた芸能人は、世の中で酒井一圭一人だろう。  なぜ、そこまでやるのか。それはドン底に落ちても見捨てなかった人たちがいるから。なぜ、そこまでやれるのか。それは、純烈を続けてよかったと思えるハッピーが待っているから。  40代のオッサンでも、物事を判断する際にそれが是なのか非なのかの2択ではなく“ハッピー”という3つ目の選択肢を設け、そこに全力で突き進めば輝ける。純烈は、決してマダム層だけのものではない。実はメンバーと同世代の“男子”こそが、インスパイアするべき対象なのだ。 取材・文/鈴木健.txt 撮影/ヤナガワゴーッ! 山田耕司・遠藤修哉(本誌)
(すずきけん)――’66年、東京都葛飾区亀有出身。’88年9月~’09年9月までアルバイト時代から数え21年間、ベースボール・マガジン社に在籍し『週刊プロレス』編集次長及び同誌携帯サイト『週刊プロレスmobile』編集長を務める。退社後はフリー編集ライターとしてプロレスに限らず音楽、演劇、映画などで執筆。50団体以上のプロレス中継の実況・解説をする。酒井一圭とはマッスルのテレビ中継解説を務めたことから知り合い、マッスル休止後も出演舞台のレビューを執筆。今回のマッスル再開時にもコラムを寄稿している。Twitter@yaroutxtfacebook「Kensuzukitxt」 blog「KEN筆.txt」。著書『白と黒とハッピー~純烈物語』『純烈物語 20-21』が発売
純烈物語 20-21

「濃厚接触アイドル解散の危機!?」エンタメ界を揺るがしている「コロナ禍」。20年末、3年連続3度目の紅白歌合戦出場を果たした、スーパー銭湯アイドル「純烈」はいかにコロナと戦い、それを乗り越えてきたのか。
白と黒とハッピー~純烈物語

なぜ純烈は復活できたのか?波乱万丈、結成から2度目の紅白まで。今こそ明かされる「純烈物語」。
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