入社後すぐに1週間の有給申請、そのまま退職した新入社員。一同を唖然とさせた理由は?
春といえば、多くの企業が新入社員を迎え入れる時期。新卒はもちろん、転職してきたという人も。新しい仲間の活躍を心待ちにする声がある一方、新入社員にまつわる苦い記憶を思い出すという人もいる……。
一昨年、入社3年目だった片瀬綾さん(仮名・当時24歳)のもとに、初めて直属の後輩がやってきた。ずっと鹿児島県で育った新入社員の彼は、大学卒業を機に県外へ飛び出したという。
「すごく明るくて、ハキハキしている一方で、少し天然っぽいところがありました。そんな雰囲気が私としては可愛くて、他のおじさん社員たちにも好かれていたと思います」
周りの社員たちの期待に応えるように、どんな小さな仕事でもしっかりこなそうと努力していたそうだが、ゴールデンウィークが明けた初日の月曜日の朝から彼の様子がおかしくなった。
「出勤してすぐ、給湯室で私と彼は部長たちのお茶を用意していたのですが、突然『今日午後から金曜日まで休みたいんですけど、どうしたらいいですかね』と言ってきました。理由を聞いたのですが、話したくないようでした」
体調不良ではなく、私用で休みたいとのことだった。片瀬さんの会社では入社と同時に12日ほどの有休が与えられるのだが、休むには事前申告が必要だった。片瀬さんは「せめて今日休暇申請して、明日から休んだら?」と提案したのだが、「どうしても今日休みたい」と少し焦るような表情で言ってきた。
そこで上司にお願いし、個別に話す時間を設けてもらった。事情を聞いた上司は、月曜日午後から金曜日までの休暇を許可することにした。ゴールデンウィーク後、出社早々いきなりその週をまるまる休むとは何事だろうか。
「理由については“個人的な理由なので”ということで教えてもらえなかったのですが、家庭の事情か何かだと思っていました」
翌週の月曜日、彼は出勤してきた。いつも通り、ハキハキと挨拶しているのを見て安心したのもつかの間……その数日後に、片瀬さんは彼が5月末で退職することになったと他の社員から聞いた。
彼の身内が病気なのか、とにかく何かただならないことが起きたのだろうと多くの社員が気にかけた。本当の退職理由が語られないまま、彼は退職した。しかし、退職から1週間もしないうちに、片瀬さんは本当の理由を知ることになる。
「辞めた後にある社員が彼と食事に行ったそうで理由を聞いたらしいんです。なんでも、上京後に出会った人からビジネスの誘いを受けて、そちらで頑張りたいからだったみたいです。でも、そのビジネスが、マルチ商法みたいらしくて。もしかしたら騙されているのかなってみんなで話したのを覚えています」
怪しそうに見えても真っ当なビジネスはこの世にたくさん存在している。彼が騙されているのかどうかはわからない。しかし鹿児島から上京してわずか1か月のうちに出会い、22歳の青年の心を奪うほどのビジネスとはどんなものだったのだろうか。今となっては知る由もない。
新入社員が突然1週間の有給申請、そのまま退職することに…
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5歳の頃からサスペンスドラマを嗜むフリーライター。餃子大好き27歳。 たまに写真も撮ります。
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