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「園児の散歩もできない」保育士たちの疲弊。国、親、近隣住民の板ばさみで…

もはや園児の散歩もままならなくなりました」  こう嘆くのは、神奈川県横浜市の認可保育園に勤める片山咲さん(仮名・30代)。新型コロナウイルス感染拡大防止のために「外出自粛」が再三呼びかけられ、多くの企業が在宅勤務に切り替わるなか、現在も開園している保育園は少なくない。緊急事態宣言に伴い、東京都の一部の区では休園を決めたが、その対応は自治体によってさまざまである。
保育園

外出自粛の要請が出され、保育園では園児たちを散歩に連れ出すことも難しくなっている(※写真はイメージです。以下同)

 神奈川県では県知事から外出自粛が要請されたが、保育園の使用制限は出されていない。4月8日、横浜市は保護者に向けて「市内の保育所等は原則開園とし、保育が必要な方については、引き続き保育所等を利用していただけますのでご安心ください」と発表した。そして9日、川崎市も「保育所等は感染の予防に留意した上で原則開所とします」と続けた。  そんななか、保育園で働く保育士たちにしわ寄せがきているのだという。Twitter上には、「何が“ご安心ください”なのか意味がわからない」という声が続出。緊急事態宣言以後、現場ではいったい何が起きているのか。

「散歩もできない」近隣住民の保育園に対する厳しい目

 遊び盛りの子どもたちをずっと室内に閉じ込めておくわけにもいかない。また、外に散歩に出掛けることで、交通ルールを守る、長距離を歩いて体力をつける、自然と関わることで豊かな感性を育むなどの意義があるという。しかし緊急事態宣言以降は、近隣の住民などからクレームを受けることが増えたのだとか。 「園付近の芝生で子どもたちを遊ばせていたら、老夫婦が近づいてきて『なぜ子どもたちはマスクをしていないんだ!』と怒鳴られました。たしかに、大半の子どもがマスクを着けていませんでしたが、まだ幼いので……あまり着けたがらないんです」(片山さん、以下同)  マスク不足とも相まって、そもそも子どもにマスクを着けず登園させている親がほとんどだという。また、政府や自治体からは「密閉」「密集」「密接」の三密を避けることが重要だと繰り返されているが……。 「外を散歩させていたところ、『2メートルの間隔を開けろ!』と言われたこともあります。約20人の子どもを2人の保育士で引率していたのですが、間隔を守ろうとすれば、単純計算で前後40メートルになります。とてもじゃないですが無理ですよ。これは室内でも同じことが言えます。大勢の小さな子どもたちから、そんなに目を離すわけにはいきません。三密を避けろと言いますが、どうしても生活のなかで“保育士と子ども”、“子どもと子ども”の距離は近くなってしまいます」  保育園では現実的に難しい部分はある。にも関わらず、横浜市が公式文書で“ご安心ください”と言い放ったことに対して納得がいかないという現場の声もあるようだ。  また、そんななかで周囲から心ない言葉を浴びせられることも少なくないのだとか。 「私たちに対して『大事な子どもたちを預かっているんだから気をつけろ!』と言う人もいます。保育士が普段からどれほど気をつけて子どもたちの命を預かっているのか知らずに……。とはいえ、『安全なのか?』と聞かれても答えに窮してしまう。『100%大丈夫です』とは決して言えない。いま、もどかしい気持ちでいっぱいです。私たちが悪いのでしょうか?」  保育士たちはそんな葛藤のなかでもがいているのだ。  
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在宅勤務でも子どもを預けにくる親
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