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五輪ボランティアのために東京移住した男性。都市生活に馴染んだ今…

延期が決定したものの、ボランティアには届かぬ指示……

 新型コロナ感染が各国で爆発的に広がるなかで、囁かれるようになった東京2020オリンピックの延期論。それが実現してしまったわけだが、延期が発表された時に空条さんは何を思ったのだろう。 落ち込む 「延期の可能性が出はじめた頃は、“こればっかりはなるようにしかならないよなぁ”という程度でしたが、いざ決まってみると“そういえば今後の生活の計画が崩れたわぁ”と喪失感が大きく、そこから妻と今後の話を真剣に相談し始めました」  開催延期を受けて、会場ボランティアの参加権はどうなるのだろう? 持続されるのか、もう一度選考し直すのか。また、延期中の過ごし方に関して指示があったのかを訊ねてみると…… 「それが、組織委員会からは何も連絡がないんですよ(苦笑)。延期も報道で知ったくらいです。大会ボランティアのマイページに最後に連絡があったのは3月5日で、それも“あなたの役割が決まりました”と、まだやる気満々な内容でした。延期により参加を諦める人は、私自身含め、周りにはいません。でも、全体で見たら結構な数になると思います。例えば、面接で知り合った長野在住の女性は開催期間だけ都内の親戚の家に泊まる予定だと言っていましたし、大学生も多いので在学期間や就職の問題もあるでしょう。追加募集をするのかも、いまは何もわからない状況です」  組織委員会はボランティアにまで手が回らないのか、なんとも無責任な対応だが、空条さんは今後どのように生活する予定なのだろうか。 「オリンピック後は千葉に戻って引越前と同じ暮らしをする予定でしたが、都内が予想以上に住みやすかったので都内暮らしを延長することに決めました。都内だと基本的に歩いてどこにでも行けるし、千葉と違って強風で京葉線が止まることもないですし(笑)。千葉の持家は、今後も賃貸に出し続けるか売却する予定です。  今は、1年延期になったなりに状況の変化を楽しんでみよう、という気持ちです。そもそも、都内生活に馴染んだ頃から“本当に千葉に帰っていいのか?”と迷っていたので、ある意味で今後の生活を決断するいいきっかけになりました。最近は二拠点生活も定着しつつあるので、軸足を都内に置きながらもっと田舎に小さな物件を持つのもいいかもしれないと、妻と今後の暮らし方について話しています」  なんと、意外にも前向きな反応だった。オリンピック延期に様々な声が上がるなかで、むしろこの事態をポジティブに捉える人もいるようだ。もちろん、一連の流れのなかで実害を被った人や企業は多いだろう。しかし、個人レベルで言えば、どう受け取って次の行動に移すかは、各人のマインドに委ねられているのかもしれない。<取材・文/阿形美子>
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