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帰国だけで約250万円。青い海の楽園からいまだ帰れない海外赴任者の不安

 いまだ収束の見えない、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の脅威。状況は海外がより深刻で、国によっては未だに外出規制の状態だ。  そんな中で、思いがけない迷惑を被っているのが海外赴任者だ。2019年に日本からとある島へ赴任したSさん(40歳・男性)に、現状を聞いた。

妻と子だけでも日本に返したかったが……

Sさんが赴任した島国

Sさんが赴任した島国

 Sさんが昨年、妻と2人の幼い子供を連れて赴任したのは、太平洋の小さな島国で、あつ森(あつまれ どうぶつの森)のようなオーシャンビューが望める。島国ゆえの不便さはありながらも、豊かな自然と穏やかな村民とともに平穏な生活を送っていた。ところが、新型コロナの発生・感染拡大によって事態は急変してしまった。 「3月頭の時点では、いつ島内で感染者が出るかわからなかったので、妻と子供だけは日本に返したいと思いました。この島は物資の多くを海外に頼っているので、もし物資が途絶えたら治安が悪くなる可能性も。さらに、医療機関が極端に少なく設備も脆弱なので、感染爆発が起こったら、必ず医療崩壊してしまいます」  ただ、Sさんにはすぐに家族を帰国させられない懸念があったのだとか。 「妻の実家の田舎町では、海外からの帰国者に対し、新型コロナを持ち込むのではないかという強い警戒感がありました。また、ちょうど実家付近の病院で院内感染が問題になっていたので、帰国させる方が危ないかもしれない、と迷っている間に、3月末に入出国が規制されてしまいました」

入出国制限が緩和されても、エア代は超高額に

 家族を帰国させる機会を逃してしまったSさん。6月に入出国制限が緩和されたものの、さらに帰国させられない理由ができてしまったのだとか。 「国境封鎖によって海外との商用便が途絶えたあとは、民間企業がチャーター便を計画したのですが、普段は1人10万円前後の値段が60万円以上になると言われてしましました。諸々費用を計算したら、妻と子供を帰国させるだけでも約250万円という金額です。さらに、入境後に14日間の隔離もしなければなりませんし…………」  確かに約6倍のエア代は、懐への大きな打撃となる。Sさんの同僚たちはどうしているのだろうか? 「お盆に帰省予定だった同僚は、やはり金銭面と、隔離期間を含めると長期不在にならざるを得ないことから断念。休暇の予定が完全に狂ったと嘆いていました。島では、6月以降に海外で暮らす自国民を帰国させたり、逆に島内の外国人在留者を自国に返したり、という動きはありましたが、国内外への移動は政府管理下に置かれていて、自由にはチケットを購入できません。」
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いまだ帰国の目処つかず
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