「コロナ勝ち組」に厳しい風当たり。居酒屋で胸ぐらを掴まれ…
新型コロナウイルスの感染拡大により、業務縮小を強いられた会社や、失業者が相次いでいる中、この騒動がきっかけで思わぬ「恩恵」を受けたという人たちも存在する。業種によっては、むしろ前年比で利益増なんてことも。
東京都内の大手通信系企業子会社に勤務する今田大輔さん(仮名・40代)の例。
「外出自粛のなかでリモートワークに切り替えた企業が多く、そのためのシステム構築、PC販売などの業務が絶好調でした。今期の売り上げは過去最高を記録したほどです。夏のボーナスには反映されませんが、給与も仕事も減らず、金一封まで出ました。冬のボーナスは例年の1.5~2倍くらいあるのではないかと、社員は期待しているんですが……」(今田さん)
サラリーマンとしては、これ以上うれしいことはない。
緊急事態宣言があけた6月上旬、行きつけの居酒屋で酔っ払い、思わず喜びを爆発させてしまったのだという。すると……。
「別の常連客から『この野郎、人の不幸で自分ばかり良い思いをしやがって!』と怒鳴られ、胸ぐらを掴まれました。店長が仲裁に入りことなきを得ましたが、もうあの店には行きづらくなってしまいました。私にも落ち度はありますが、その客だって以前は『仕事で儲かった』と周囲に触れ回っていたんですよ。なんで私ばかり、と思います」(同)
多くの人が「不幸な状況」にいる中、自分ばかりが良い思いをしていると吹聴すると周囲からは疎まれるし、恨まれる。同じような経験をした、と話してくれたのはテレビ局勤務・大谷良彦さん(仮名・30代)だ。
「今のところコロナの大きな影響はなかったのですが、不景気の煽りは広告費などで間も無く絶対に跳ね返ってきます。にも関わらず、テレビ局の社員は高給の上級国民と思われていて、行く先々で嫌味を言われたり、なかには金の無心までしてくる人もいる。人付き合いについて考えさせられました」(大谷さん)
大谷さんがショックを受けたのは、子どもの通う小学校の「パパ会」での出来事だった。
以前から「エリート」だの「勝ち組」だの言われてウンザリしていたというが、最近行われた「パパ会」で、仕事が減ったり減収したというパパたちから「フクロ」にされたと訴える。
「飲み会の最中もずっと給与のことを言われ、大谷さんには関係ないよねとか、上級国民のために俺たち(下級国民)は涙を飲むしかない、といった話を延々聞かされました。確かに私の給与は皆さんより良い。しかし、皆さんが飲んでいる間、私は一人残業に追われていたり、膨大な仕事量をこなしていたりする。
挙げ句の果てに『大谷さん、儲かっているんだから』と、飲み代を多めに支払うハメになりました。もうパパ会の参加はこれっきりにしようと思っていたところ、私に嫌味を言いつづけていたパパがラインで『五万でいいから貸してくれないか』と……。さすがにキレて、パパ会のライングループから抜けました」(同)
彼らはコロナで溜まった鬱憤を、とにかく他人にぶつけたくてたまらないのだろう。そのちょうどいい相手が、身近にいる、奇しくもコロナの恩恵を受けたという人たちなのだ。
平時であれば手放しで喜べるのだろうが、こうした状況下では憚られるもの。うっかり素振りを見せてしまえば、思わぬトラブルに巻き込まれる事例も……。
「コロナ勝ち組」に対する厳しい風当たり
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