生活苦のシングルマザーが前澤友作氏の「小さな一歩」に踏み出せないワケ
前ZOZO社長・前澤友作氏(44)が新会社を設立した。その名も、「株式会社 小さな一歩」。前澤氏が打ち出した“養育費あんしん受取りサービス”は、子どもを抱えながら離婚するも、養育費を受け取れていない、その支払いが安定しない、満足な額ではないなどの“ひとり親”を支援するという。養育費支払いについての連絡は小さな一歩が行うため、元パートナーとの面会は不要……。
画期的な事業としてSNS上には大きな反響が寄せられた。だが、ある女性は利用をためらっていた。
ホームページには、<元パートナーとの関係性を悪化させることなく、安心して養育費を受け取れるようになります>と記載されており、元パートナーとのやりとりは小さな一歩の協力弁護士やカウンセラーが代行するという。
「元旦那と連絡を取らなくてもいいとはいえ、あとで何か嫌がらせをされないか心配です……彼に手続きをすすめているのを知られることさえ怖いんです」
こう話すのは、3歳の娘を育てるひとり親の山中梨沙子さん(仮名・24)。彼女が利用をためらう理由は、元旦那から壮絶なDVを受けた過去だ――。
3年前、妊娠発覚と同時に結婚。彼は気遣いのできる優しい人で、山中さんの身内からも信頼されていた。
離婚前、山中さんは大きなお腹にもかかわらず、彼が経営する会社を手伝い、家事もこなすという忙しい日々を送っていた。しかしある日、優しかった彼が突如豹変する。
「大きなお腹を蹴られたり首を絞められたりしました。その時は人間と思えませんでした」(山中さん、以下同)
結婚後、徐々にDV(家庭内暴力)やモラルハラスメントが酷くなっていった。止まない暴力やモラルハラスメントに、自分だけでなく、お腹の子どもの命の危険を感じた山中さん。
この場から逃げなければ、と頭の中で考えるが、躊躇してしまう。彼が山中さんの親のところへやって来て、何か嫌がらせをするのではないかと不安になったからだ。
子どもの命を守るため、安定期に入ると同時に彼のもとを離れた。産婦人科に事情を説明し、協力をしてもらいながら、無事に娘を出産。
そして離婚することになった。だが、ひと筋縄ではいかなかった。暴力からは解放されたが、これからの生活に対する不安は大きくなった。
「産婦人科にかかる費用や当面の生活費、子供の洋服、ミルク、生活道具全てを買わなければいけないので借金をしていました。ただ、仕事もできず、返す見込みがないので毎日が不安で精神的にも追い込まれていきました」
山中さんの車も元旦那の家に置いてきてしまい、普段の買い物や保育園の送り迎えなどでも苦労する場面が増えた。就寝後は悪夢を見るようになり、怖くなって起きてしまう。毎日1~2時間しか眠れないまま仕事に行くことも多く、体力的にもきつい日々が続いたそうだ。
娘のために経済的な不安を解決したい。悩んだ末、山中さんは養育費、慰謝料、財産分与で裁判をおこすことにした。それでも、裁判所に提出する裁判申請の書類に住民票に記載されている住所を記入することに抵抗があり、裁判を進められずにいた。そこに、予想外の出来事が起こる……。
「元旦那が交際中の女性に暴力を振るったとして逮捕されました。裁判は全て破棄になってしまい、借金と裁判費用の支払いだけが残りました」
養育費はどうしたらいいのか。精神的なダメージは計り知れなかった。
逃げ出した直後は誰にも居場所を知らせず、ひっそりと暮らしていたが、山中さんは実家で暮らすことにした。娘の夜泣きがひどい時などは家族がサポート。現在は山中さんの父親が娘の父親役を担ってくれているという。
「今は娘の日々の成長を見守りながら暮らせています。私にとって家族は全てを受け入れ、支えてくれ、命よりも大切です」
家族の協力に感謝しながらも「いつまでも甘えるわけにはいかない」と感じている山中さん。落ち着いたら家を出ようと、少しずつ生活を立て直していた。
やがて仕事も見つかり、娘を保育園に預けながら仕事に精を出していたところ、新型コロナウイルスの感染が全国に拡大。そしてこの影響で保育園が4月中旬から自粛になり、仕事を休まざるを得なくなった。
コロナ関連で仕事を休まなければならない人向けにも手当があることを報道などで知り、会社に手当について聞いてみるが、「休業補償も小学校休業等対応助成金も使わない」と言われたそうだ。
「小学校休業等対応助成金は使えるだろうと期待していたので、目の前が真っ暗になりました。『もう少し早く貰えないとわかれば、無理やりにも保育園お願いして働いたのに』と思った時もありました。無収入になって、お菓子も買ってあげられず、娘にはストレスだとおもいます」
先日、娘が誕生日を迎えたがお祝いは控えている。
「本当は娘の好きなケーキを買ってあげて、娘の好きなキャラクターのおもちゃなどプレゼントしてお祝いしたいのですが、給料が無くなり、できません。国からの支援はありますが第2波が襲ってきているので、万が一に備えて使うこともできません」
やっと元旦那からの恐怖から抜け出してきたところに、新型コロナの波が押し寄せる。泣きっ面に蜂である。それでも、当時を振り返ってこう話す。
「逃げ出した後悔はまったくありません。むしろあの状況から逃れる勇気を出せた自分を誇りに思います。今後の夢はお金について毎日悩むこの日々を抜け出して娘の将来に選択肢を与えてあげられるような親になりたいです」
DVを受けた過去、元旦那の恐怖がよみがえる…
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5歳の頃からサスペンスドラマを嗜むフリーライター。餃子大好き27歳。 たまに写真も撮ります。
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