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虹プロだけじゃない。オーディション番組が乱立する韓国テレビ事情

韓国でリアリティショーが乱立するワケ

 他方で『PRODUCE48』の姉妹番組『PRODUCE 101』(Mnet)では、やらせ問題も勃発した。番組プロデューサー2名が逮捕され、その余波を受けて番組出身のグループ・X1 は解散。IZ*ONEも一時は活動停止に追い込まれたのである。日本では『テラスハウス』(Netflix/フジテレビ系)に出演していたプロレスラー・木村花さんが自殺したことでリアリティー番組のあり方が見つめ直されているが、韓国でもテレビ絡みの自殺は残念ながら後を絶たないのが現状だ。  それにしても、なぜ韓国はこうまでオーディション番組で溢れているのか? コンテンツ供給会社/芸能プロダクション・JAKE社長のピョ・ジェシク氏は、その背景について次のように解説する。 「よく言われるのは韓国が厳しい競争社会だということですよね。幼少の頃から受験戦争に巻き込まれて、大学を卒業する際も一部の財閥企業に入るために熾烈な就活を経験する。会社に入ってからも出世レースは過酷で、そこからドロップアウトしたら二度と這い上がれない。それに加えて徴兵制がありますからね。軍隊式のマッチョイムズが国民に浸透しているので、テレビに求めるものも殺伐としたものになりがちなんです。  ただ一方で『バトルはもういい』という意見もあるんですよ。日常生活が競争ばかりなんだから、せめてテレビの中くらいバチバチした世界から離れたいという考え方ですよね。全体として見ると、今はこれでもオーディション番組の人気は下降期だと思います。『スーパースターK』(Mnet)という番組が大ブレイクしたことで、一時は本当に似たような番組が山のように作られました。だけど『PRODUCE 101』のやらせ問題もあって、今は小康状態。視聴者も“サバイバル系オーディション疲れ”に陥っている。もっとも韓国人は流行りに弱いというか、一度何かがブームになると全員が同じ方向を向く傾向がありますから。今後、再びモンスター番組が生まれる可能性も否定できません」  次回以降、韓国サバイバル系オーディション番組の舞台裏で何が起こっているのかをピョ・ジェシク氏が踏み込んでレポートする。現在は「第3次韓流ブーム」に沸く業界だが、K-POPや韓流ドラマの表層的な盛り上がりからは決して見えてこない韓国芸能界および韓国メディアの深層が浮き彫りになるはずだ。
出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。
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