更新日:2020年08月02日 08:39
エンタメ

オーディション番組が乱立する韓国、モデルは日本の『ASAYAN』だった

モーニング娘。を生んだ伝説的オーディション番組がASAYANだった

90年代後半の日本の番組を参考に

『Nizi Project(通称:虹プロ)』(Hulu/日本テレビ系)や『PRODUCE48』(Mnet)といった韓国発のオーディション番組が話題になっている。日本の番組にはないシリアスなトーンやドラマチックな展開が幅広い層から支持されているのだ。実際、韓国のテレビはオーディション番組で溢れかえっている。しかし、「最初からこんな状況だったわけではない」とコンテンツ供給会社/芸能プロダクション・JAKE社長のピョ・ジェシク氏は語る。 「そもそもオーディション番組自体は、韓国よりも日本のほうが昔からあったはずです。韓国の番組は90年代後半に日本で流行っていた『ASAYAN』(テレビ東京系)とかを2000年代に入ってからパクった……というか影響を受けた部分は大きいんじゃないでしょうか。  当時、私は日本に留学していたんですけど、大学時代の先輩がMBCでプロデューサーをやっていた。それで『面白い日本のテレビ番組があったら、録画して送ってくれないか?』とよく頼まれていたんです。あの頃、韓国テレビ局の現場で働いていたスタッフは、日本だけじゃなく、いろんな国のテレビ番組を参考にしていたと思うんですよね。  そうやって日本やアメリカで流行った番組のフォーマットを参考にしつつも、韓国の視聴者が喜ぶように味付けもして番組を作ったわけですけど、そんな中にオーディション系サバイバル番組もあった。『虹プロ』で日本でも注目されるようになったJYPエンターテインメントやパク・ジニョン(J.Y. Park)は、2001年に子供向けオーディション番組『99% の挑戦』(SBS)という企画も始めているんですね。ちなみに2AMのリーダー、チョ・グォンはこの番組出身。  その後もJYPやパク・ジニョンは『Kポップスター』シリーズ(SBS)にも審査員としてしっかり入っているし、なにも『虹プロ』でいきなりオーディション番組を始めたわけじゃない。むしろ『なんで今さら日本でパク・ジニョンが騒がれているの?』というのが韓国人の率直な反応です」(ピョ・ジェシク氏)

スーパースターKで流れが変わった

 自分の事務所からグループをデビューさせるとき、スタッフはどんなメンバーを選ぶか? 結局、それは自分のところで鍛えた練習生ということになる。では、才能がある若者をどのようにして見つけ、自分の事務所の練習生にするのか? もちろん各事務所はオーディションやスカウトを頻繁にやっているが、決して効率的とは言えないのが実情である。そこでテレビ局が仕掛ける番組とタッグを組んでおけば、人材が見つけやすくなるのは事実だろう。 「ただ、正直言って『99%の挑戦』は番組としてはさほど話題にならなかったんですよね。その後も似たようなオーディション番組が作られたんだけど、視聴率的には大したことなく終わっていますし。この流れを変えたのが2009年から始まった『スーパースターK(通称:シュスケ)』というわけです。シュスケの人気は本当に半端じゃなかった。影響力もすごくて、ここで韓国におけるテレビ番組作りが大きく変わっていきました。  ひとつポイントとなるのは、『スーパースターK』がMnetで作られたということ。Mnetはケーブルテレビです。それなのに多くの人が観ていたというのは、韓国人にとっても大変な驚きがあった。これには韓国のテレビ局事情を説明する必要があるかもしれませんね……」(同)
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韓国の地上波は3局
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出版社勤務を経て、フリーのライター/編集者に。エンタメ誌、週刊誌、女性誌、各種Web媒体などで執筆をおこなう。芸能を中心に、貧困や社会問題などの取材も得意としている。著書に『韓流エンタメ日本侵攻戦略』(扶桑社新書)、『アイドルに捧げた青春 アップアップガールズ(仮)の真実』(竹書房)。

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