更新日:2020年10月17日 00:29
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筒美京平は“ディスコ歌謡曲の父”だった 「シンデレラ・ハネムーン」は最高傑作

文/椎名基樹

「筒美京平」のプレイリストを作ったばかりだったのに……

 作曲家の筒美京平さんが10月7日に亡くなられた。享年80歳だった。筒美京平(以下、敬称略)は日本の音楽界で最も多くのヒット曲を生んだ作曲家だ。作曲作品の総売上枚数は7,560.2万枚で、作曲家歴代1位である。チャートの1位を獲得した曲は39曲。TOP3以内が約100曲、TOP10入りした作品は200曲を超える。(オリコン調べ)
筒美京平自選作品集

筒美京平自選作品集 50th Anniversaryアーカイヴス アイドル・クラシックス(ビクターエンタテインメント)

 私の少年時代はテレビの歌番組が全盛であり、度々目にする「作曲 筒美京平」のテロップが強く記憶に残っている。字づらが美しく、どこかキザな印象を持っていた。名前の4文字全てが左右対象になるように考えられたペンネームだそうだ。  私は筒美京平の訃報に驚いた。1ヵ月ほど前、きっかけは忘れたが、私は岩崎宏美の曲がディスコアレンジであることに気づいた。作曲者を調べると筒美京平だった。  私は、筒美京平のウィキペディアに掲載されている、ディスコソングが流行した年代に、彼が作った曲をアップルミュージックでしらみつぶしに聴いた。そして「筒美京平・ディスコ歌謡曲」というプレイリストを作った。(デジタル時代のオリジナルテープ作り!)。そのプレイリストを、勝手に友人にメールで送りつけ悦に行っていた。そんなことがあった矢先の訃報だった。

岩崎宏美を「日本のドナ・サマー」にした

 筒美京平は、様々なジャンルの曲を作っているが、尾崎紀世彦の「また会う日まで」等のR&B、前述のディスコソング、C-C-Bの「Romanticが止まらない」等のニューウェーブと時代ごとのダンスミュージックを作曲している。最新の洋楽のエッセンスを、いち早く歌謡曲に取り込むところが、筒美京平の真骨頂だった。その中でもディスコソングは日本の歌謡界において、筒美京平がほぼ独占していた感がある。
岩崎宏美「シンデレラハネムーン」

岩崎宏美「シンデレラハネムーン」(ビクターエンタテインメント)

 抜群の歌唱力で筒美京平の“和製ディスコ路線”を引っ張っていたのが岩崎宏美である。岩崎宏美はいわば日本のドナ・サマーだったのだ。「シンデレラ・ハネムーン」「未来」「ファンタジー」「センチメンタル」と出来の良い曲は優先して岩崎宏美にあてがったと思うほど名曲ぞろいである。「未来」のイントロなどこれぞディスコソングだ。その中でも最高傑作は「シンデレラ・ハネムーン」だろう。  この「シンデレラ・ハネムーン」は、コロッケがものまねしたがために、岩崎宏美がコンサートで歌うと笑いが漏れるようになったため、封印していたという。今は笑い話として話しているが、当時は心底腹が立ったことだろう(笑)。  桜田淳子の「リップスティック」も名曲だ。ディスコソングなら都会的な山口百恵の方がイメージが合う気もする。しかし、イメージが固定されていた山口百恵よりも、桜田淳子の方が最新の流行が似合う余白があったのかもしれない。
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筒美京平が最初に作曲したディスコソング
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1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina

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