仕事

非正規雇用者のボーナス支給はアリかナシか。現場の声を聞く

 非正規社員・スタッフにボーナスや退職金は払われるべきなのか――。
ボーナス

※写真はイメージです(以下同)

 総務省の労働力調査によれば、労働者全体のおよそ4割と言われる「非正規雇用者」たちは、2000年代前半の「構造改革」以降増え続ける一方である。  これまで正社員との待遇格差が問題視されてきた。非正規雇用者のボーナスや退職金支給などの是非が争われるケースも目立ち、10月13日と15日には、5件の訴訟の判決が言い渡された。大阪医科薬科大でアルバイトの秘書として働いていた女性が、ボーナスの不支給など待遇格差について訴えた件では、最高裁が「不合理とまで評価することはできない」と判断した。  その際、非正規雇用者たちからは「不当な判決」「差別的だ」などの悲痛な叫びが噴出したが、一方で胸をなで下ろした人もいる。

「アルバイトやパートにボーナスを支給したら会社が潰れる」の声

 東京都大田区の工場経営・中島継夫さん(仮名・70代)が話す。 「うちのスタッフはほぼ8割がパートさんね、近所のおばちゃん。パートさんには工場の作業やってもらって、残り2割の社員が営業で走り回って仕事を取ってくるの。今まで、ずっと、何十年もこれでやってきたわけ。パートにもボーナス出るの? って言われてさ、血の気が引いたね」(中島さん)  件の訴訟は、その都度テレビや新聞で報じられていたため、目にしたパート従業員が中島さんに聞いてきたのだという。 「ボーナスの出る社員と、ボーナスの出ないパートさん、どちらが欠けても回らない仕事だけど、やっていることは別々。社員の工員もいるけど、かなり専門的な仕事をやらせているし、技術もある。表面だけ見て、同じ会社なのにとか、同一労働で同一賃金とか言われてもそれは無理って話でさ。全員にボーナス出す、退職金出すってなれば、会社は潰れちまうね。仕事がなくなれば、本末転倒じゃない?」(同)

正社員は会社に人生を握られている

 都内の大手テレビ局勤務、現在は総務部に在籍する本田寛人さん(仮名・40代)も、当の判決を支持する。 会社員「テレビ局で働く人のうち、もう半分以上が非正規スタッフです。以前は社員しかなれなかった警視庁記者クラブ、司法記者クラブ詰めの記者も、最近は非正規という場合も多くなりました。彼らは確かに、社員と同じように仕事をしますが、決定的に違うのは、彼らには大きな異動がないこと。希望の職種で働けるんです」(本田さん)  実は本田さん、入社時の夢は「バラエティ番組のプロデューサー」だったのだが、一年目から報道担当になり、丸10年を過ごした後は人事部、さらに絶対にやりたくなかった営業、社長室担当と渡り歩いた。  これは本田さんの名誉のために書いておくが、決して無能だから「たらい回し」にされたのではない。本人は望まなかったものの、社内では「出世コース」に乗ったと羨望の眼差しを向けられていた。 「正社員は、もう会社のためなら何でもする、会社に人生を握られている、ということです。私は我慢して正社員を続ける判断をしたんです。そういった人事異動が嫌だからあえて非正規、というのは判断としてはありだと思いますし。実際、正社員だったのに辞めて、子会社に入り直し、好きな部署で働いているなんて部下もいますから。正社員と非正規は明確に仕事が違う。そこだけははっきり言っておきたい」(同)
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「非正規」の仕事範囲や責任を明確にしてほしい
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