冬の屋外で2時間謝罪、車で轢かれそうに…“想像以上にヤバイ”現場のカスハラの実態と今後
顧客の理不尽な言動が「カスタマーハラスメント(カスハラ)」として社会問題となり、2022年には厚生労働省がカスタマーハラスメント対策企業マニュアルを公開。国をはじめ、自治体や企業もカスハラ対策に乗り出している。
報道などですでに知っている人も多いかもしれないが、まずは「カスハラ」とはどういった言動を指すのかについて、UAゼンセンがカスハラ対策に取り組みはじめた2016年より政策を担当してきた波岸氏に聞いた。
「カスハラと混同しやすい言葉にクレームというものがありますが、こちらは顧客からの要求や改善提案を含むものです。対してカスハラは要求内容や要求態度が社会通念に照らして著しく不相当であるクレームや顧客からの迷惑行為のことを指し、2022年2月に厚生労働省が発表したカスタマーハラスメント対策企業マニュアルにも“性的な言動”や“土下座の要求”など具体的に記載されています」
また、2023年9月よりカスハラが労災認定基準に追加。顧客や取引先、施設利用者から著しい迷惑行為などのいわゆるカスハラにより精神疾患を患った場合、労災申請が可能となった。さらに来年2025年4月には、東京都カスタマーハラスメント防止条例が施行される。
「企業をはじめ、国や自治体が指針を示すほど現場でのカスハラ問題が深刻化していたのです。具体的には、体を触ったり暴行を加えたり、脅迫や監禁するなど、すでに犯罪であるようなものも含まれます」
さらに詳しく話を聞いてみると、想像以上にヤバイ現場の状況がみえてきた。なかには、店舗のスタッフを長時間にわたって拘束するなど、映画やドラマに出てくるアウトロー系の登場人物の手口としてしか見たことがないようなものも少なくない。
「時間拘束型とよばれるものでいうと、『冬の屋外で2時間以上、謝罪させられた』『従業員の伝達ミスから無理難題を要求され、3名が夜間に約1時間半~3時間にわたって拘束された』という例もあります」
また、「歯を食いしばれと言われ、殴ろうとしたり、車で轢こうとしたりしてきた」というものや「店舗売場へ自転車で乗り入れたお客を注意したら、自転車を倒して足にぶつけられて暴言を吐かれた」というものもあるというのだから恐ろしい。
「ほかにも、『勝手に写真を撮られたり、テーブルに行くたびに腕を触られたり、常連さんだと思って話しかけたら腰に手を回されたりした』というように身体を触られたり、画像や動画を勝手に撮られたりするなど、現場では法に触れる犯罪行為も多く発生しています」
そして、「女のくせにと暴言を吐かれ、後日木刀を持って再来店。暴言を吐かれた」「購入した鍋の具材に不良品があったと連絡があり交換に向かうと、排水溝に捨ててあった具材を水切りネットから取り出し、問題がないか食べて確認させられた」という事例もあるという。
スーパーやコンビニなどの多様な雇用形態における労働者の課題を解決する組織「UAゼンセン」にてカスハラ政策に取り組み、流通部門で副書記長を務める波岸孝典氏に話を聞いた。そのうえで、カスハラの定義や現場のリアル、労働者や顧客として気をつけることなどを紹介したい。
労災認定基準にも追加された「カスハラ」
想像以上にヤバイ現場のカスハラ
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意
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