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女優・蒔田彩珠。映画『朝が来る』役になりきった日々

見どころは……もう映画全体です

――できあがった作品を、実際に観てどうでしたか? 蒔田:そうですね……自分よりも、周りの人の反応がすごくて、観終わった後に「すごいよかった!」って言ってくれるので「あぁ、この役をできてよかったなぁ」と思いましたね。実際、撮影期間は本当に辛かったこともありましたね。本当に、原作小説の世界を追体験できました。あと、最初は、14歳の中学生の頃だけやるのかなと思っていたので、最後まで演じられるんだ!とも思ったり。 ――その、14歳から20歳までを演じるというところで、年齢によって意識して演じ分けたところはありますか? 蒔田:すべて順撮りでした。14歳から始めて、本当に台本通りに進んでいく。すごい幸せな時があって、それからどんどん落ちていって。その順番通りに撮影をやったことで、本当に辛くなったので、あまりなにかを意識することはなかったです。 ――公開中の映画『星の子』での(芦田愛菜さんが演じる主人公の姉の)“まーちゃん”役も含めて、複雑な家庭の作品が続いてるなぁと思っていて……もちろん蒔田さんの実際のご家庭とは違う感じだと思うんですけど、演じてみてどうですか? 蒔田:そうですね。私の家族は、たぶん、周りよりすごく仲がよくって……だからこそ複雑な家族をやる時は、なかなか想像できなくて、そこはもう、研究するしかなかったです。 ――そこで、役積みが役立ったという感じですか? 蒔田:役立ちましたね。あんなに役づくりをする期間をとってもらうことってなかなかないので、最初、役積みをやるって聞いた時は「そんなことするんだ、映画でそんなことできるんだ」と思ったんです。でもやり終えたら「やって良かったな」と思いました。 ――C&Kさんが歌う主題歌の『アサトヒカリ』はどうでした? 蒔田:主題歌は、麻生巧の役の田中偉登さんと一緒にいた時に、初めて聴かせてもらって……その後、何かあるたびに、河瀨監督が現場で流すんですよ。気持ちがちょっと抜けちゃっている時とかに、曲を流してくださって「そうだ!」ってなることが多かったですね。 ――印象的な歌詞ですし、劇中でも何度も歌ってましたよね。その歌もですが、映画『朝が来る』の見どころをお聞かせ下さい。 蒔田:見どころは、ここのシーン!とかではなく、もう映画全体です。私が演じた「ひかり」みたいに、産んでも育てられない(状況にいる)女性も、いらっしゃると思うんです。でも、それを知る機会は全然なくて。養子縁組自体は取り上げられることはあっても、(養子に出される子を)産んだ側の女性の、その後やその前を知ることはあまりないので、この映画を通して、大人だけでなく私と同年代の人にも観て、知ってもらえたらいいなと思います。 focuson02******impression******  最初に女優としての彼女を意識したのは映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を観た時。ギターを片手に、寡黙ながらも強い意志を魅せる演技が、とても印象的だった。今秋公開になる映画『朝が来る』では、中学生で妊娠・出産、波乱万丈な数年間を経て状況が変化した後、難しい感情を表現する演技をこなしている。  そんな彼女も、実際に話をしてみると、芸歴こそ若くして長いとはいえ、やはり18歳の女の子。時折、のぞかせる明るい表情と笑い声には、彼女が演じてきた様々な女の子たちの、それぞれの素顔を見ているような錯覚を覚えたりもした。等身大の彼女の色々なことも、次回は聞いてみたい。 蒔田彩珠(まきた・あじゅ) 2002年8月7日生まれ。神奈川県出身。7歳の時に子役デビュー。2012年、是枝裕和監督によるテレビドラマ『ゴーイング マイ ホーム』(関西テレビ系)での好演が話題となり、その後、2016年『海よりもまだ深く』、2017年『三度目の殺人』、2018年『万引き家族』と、是枝監督作品の常連に。2018年、初主演を果たした『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』では第33回高崎映画祭最優秀新人賞等を受賞。10月23日からは物語のキーパーソンとなる「片倉ひかり」役を務めた、河瀨直美監督作品『朝が来る』が公開。来春にはNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』への出演も控える。インスタグラムは@makita_aju 取材・文/鈴木さちひろ 撮影/山川修一
武蔵野美術大学大学院卒。テレビ朝日にて番組等のプロデュースを行なう。ほか、作詞や脚本の執筆、舞台の演出・プロデュースなどを手掛ける。
本連載の企画方針は「♯0」をご覧ください。
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映画『朝が来る』は10月23日(金)全国公開!
監督・脚本・撮影:河瀨直美
永作博美 井浦新 蒔田彩珠 浅田美代子
原作:辻村深月『朝が来る』(文春文庫)
共同脚本:髙橋泉 音楽:小瀬村晶 An Ton That 主題歌:C&K「アサトヒカリ」(EMI Records)
制作プロダクション:キノフィルムズ 組画 共同制作プロダクション:KAZUMO
配給:キノフィルムズ/木下グループ
(C)2020「朝が来る」Film Partners
公式HP:asagakuru-movie.jp
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