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プロ野球ドラフト会議、現場に流れた“別の思惑”「甲子園がなくてよかった」

ドラフト 毎年恒例のプロ野球ドラフト会議も終わり、4球団が競合した近畿大学の佐藤輝明、早稲田大学の早川隆久など注目選手を巡って悲喜交々のドラマが繰り広げられ、ファンも一喜一憂したことだろう。では、そんなドラフト会議について、スポーツ紙記者たちはどう見ているのだろうか。話を聞いた。

波乱のないドラフト

 話を聞いたのは関東の某チームで番記者を務めるスポーツ紙記者だ。彼によれば、今年のドラフトは近年まれにみる「穏やかなドラフト」だったという。 「ドラフト前に各球団が公表したり、匂わせていた通りの指名に落ち着きました。中日が一本釣りした高橋宏斗も巨人と楽天が指名する気配もありましたが、楽天は早川隆久を指名して見事に引き当て、巨人も佐藤輝明を指名しました。その他、広島の栗林良吏、ベイスターズの入江大生など、当初の予定通りといった感じで指名が入り、ハズレ一位指名も巨人に決まった亜細亜大学の平内龍太など、実力のある選手たちが1位で指名を受けました」  そんな穏やかなドラフトだったのだが、記者たちが「おやっ?」と感じて話題になったのは、西武が一位指名した桐蔭横浜大学の渡部健人だ。 「おかわり2世とも呼ばれる巨体が目を引くスラッガーですが、評価としてはドラフト2~3位が妥当な選手。実は中日が高橋を一本釣りに成功したことで、渡部を2位で指名しようとしていたという噂が流れたんです。その動きを西武は察知して急遽1位で指名に踏み切ったようなんです。桐蔭横浜大学に中日スポーツのエース級記者が来ているのを目にした記者たちの間でも、『これは中日が高橋を競合で外したら、ひょっとしたらハズレ1位か2位で指名するんじゃ……』と噂になったんです」

甲子園などの大会が中止になったことでスカウトはニンマリ!?

 とは言え、おおむね穏やかにドラフトは終わったと記者は総括する。穏やかに終わった一番の理由は何かと尋ねると、記者は「コロナ」と即答した。 「コロナの影響で、甲子園などの大きな大会が中止になってことで、大会で前評判を覆す活躍をする、いわゆる“ポッと出”の選手が今年はいなかった。これによって、上位で指名すべき選手としなくてもいい選手が明確に別れたわけです。ヘタに甲子園で活躍されようものなら、上位指名で競合もあり得るわけで、そうなるとドラフト戦略は複雑になります。 それと“隠し球”の存在ですよね。スカウトたちがずっと目を付けていた素材型の選手や大舞台に縁がなかった実力派選手、いわゆる“隠し球”と呼ばれる選手が試合に出なかったことで、活躍することもなかった。そうなると、上位指名はある程度の競合を覚悟で指名しても、隠し球の選手をしっかり下位指名で獲得できるので計算が立つわけです」  だが、甲子園などの大会がなかったことで、選手の実力を見極める場が減ったのではないだろうか。こうした疑問について関西地方のスポーツ紙記者は「違う」という。 「甲子園で活躍して急成長する選手がいることも確かですが、そもそも各球団、ドラフトで指名する選手は甲子園よりももっと前にある程度決めているんです。高校生どころか、中学生や小学生から目を付けられている選手も多いんです。 あるスカウトは『不謹慎だが、今年は甲子園がなくてよかった。これで肩も肘も壊れない。“隠し球”もしっかり隠し通せる』とまで話していました。甲子園の優勝投手の多くは連投と登板過多状態ですからね。スカウトからしたら、せっかく狙っていた選手がケガなどされたらたまったもんじゃない」
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指名しなくてもいい選手たち
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愛知県出身。スポーツからグルメ、医療、ギャンブルまで幅広い分野の記事を執筆する40代半ばのフリーライター。
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