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プロ野球ドラフト会議、現場に流れた“別の思惑”「甲子園がなくてよかった」

指名しなくてもいい選手たち

 また、甲子園がなかったことで、本来なら高い順位で指名しなくてもいい選手を指名しなくてもよくなったことも、スカウトや球団としてはホッとしていたと、この記者は言う。 「いわゆる“ポッと出”の選手は、パチンコで言う“確変”みたいなもんなんですよ。本当なら下位指名で獲って、プロに入って活躍してくれたらラッキーというクラス。でも、これが優勝投手になったり、ヘタに活躍されるとメディアの注目も高まるし、選手の地元の球団は指名しろという論調が高まります。今年はそういった選手を無理に上位指名しなくていいわけです。 これは球団だけでなく、選手にとっても幸せなことなんですよ。メディアの注目も少なければ、周囲から過度の期待もないし、おまけに登板過多もなく肩や肘も消耗していない。彼らはまだ18、19歳の子供ですから、変な十字架を背負わせずに伸び伸び野球ができるなら、それにこしたことはない」

波乱だった育成ドラフト

 順調に終わったドラフトと比べ、育成ドラフトは波乱だったという。夕刊紙野球担当記者に聞いた。 「巨人から育成3位で指名された敦賀気比の笠島尚樹、オリックスから育成3位指名の宇田川優希、育成5位の佐野如一の仙台大学コンビが入団拒否を表明しています。これまでも育成ドラフトの指名を拒否した選手はけっこういるんです。でも、今回の拒否を表明した3人はいずれもドラフト前から『育成なら全球団拒否』を表明していたんです」  育成なら拒否を指名していたのに強行するとは、余程の勝算があったのだろうか。それともやけっぱちでの指名だったのだろうか。 「オリックスも巨人もなにがしかの口説ける公算があったのでしょう。ですが、笠島は早々に拒否を再表明。オリックス側は仙台大学に経緯の説明を行ったようですが、こちらも拒否になると言われています。敦賀気比は強豪校でプロ選手も多数輩出していますし、仙台大学もここ数年プロ選手を3人輩出して地力を付けてきている。ヘタをすると拒否しているのに強行指名したことで、学校と球団の間に遺恨が残ることもありえます。今後はその球団からの指名は拒否ということにもなれば、遺恨どころの話じゃない。球団からすれば大失態です」  記者の間ではオリックスの強行指名に「呆れた」という声も多かったという。 「同じ大学から拒否を表明する選手を2人も指名するなんて、正気の沙汰じゃない。どちらか1人でも支配下で獲っていれば、その代わりもう1人は育成で……という交渉もできたんでしょうが、2人とも育成でしょう。選手も学校もバカにしていると思われても仕方がない」  誠意は見せると言うが、指名拒否を表明する選手を強行指名した時点で誠意もへったくれもないと思うのだが……。入団交渉には注目してみたい。 取材・文/谷川一球
愛知県出身。スポーツからグルメ、医療、ギャンブルまで幅広い分野の記事を執筆する40代半ばのフリーライター。
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