仕事

高校中退後、板前、トラック運転手など職を転々。IT社長の異色の経歴を覗く

画像切り抜きサービス誕生秘話

切り抜きjp

撮影された商品写真は、雑誌やWebに掲載する際、背景の切り抜き作業が必要となる

 渡邉氏が画像切り抜きサービス『切り抜きjp』を発案したのは、韓国でビジネスをやっていた際、商品の撮影や写真加工といったECサイトに載せるための作業を自分でやっていた経験が元になっているという。 「とにかく画像の切り抜きに時間かかっていたんです。すでに国内サービスもあったんですが、どこも値段が高くて。外注先を探していた時、ベトナムの会社が運営している少したどたどしい日本語サイトを発見して依頼したら、サービスの価格が安くて便利だったんですね。もっとしっかり日本向けにサービス展開すれば流行るだろうな、と思ったんですね」  就職活動に行き詰まりを感じて、心機一転、大前研一氏の『アタッカーズ・ビジネススクール』に参加したことも背中を押したようだ。 「当時は大前さんもご自身で講義されていましたし、講師も受講者もいろんな方がいて刺激になりました。いろいろ勉強したことは、それはそれで役に立っていますが、勉強グセがついたのがいちばん良かったと思います。大前さんは海外リソースを活用することが今後のビジネスでは非常に大事になるといったことを語られていて。そこは『切り抜きjp』の建て付けと共通している点ですね」

インドに拠点を設立

テレワーク

コロナ禍に伴い、インドで完全テレワーク化。自宅で作業する社員の様子

 2006年4月頃からインドと中国の事業マッチングサイトでパートナーを募り、海外の提携先を開拓。4か月間ほどの準備期間の末、2006年8月にWebサイト『切り抜きjp』をオープンした。  創業直後から有名企業から問い合わせがあるなど手ごたえを感じ、2006年12月に法人化。2012年にはインドに100%子会社を設立し、大幅な供給能力を向上に成功する。売上げは最初の決算期の1400万円から右肩上がりで成長してきた。 「手持ちの30万円と友達から150万円を借金してサーバーを借りたり、フリーダイヤル開設したり……だいたい200万円弱くらいの初期投資で始めています。受け切れないくらいの問い合わせもすぐ入って、ニーズ自体はあると確信しました。ですが、本当に小規模なところから始めているので最初の2年間は耐えていました。そもそもお金がなかったので、なんとかしなきゃという感じで」
渡邉堅一郎

株式会社メディア・バックオフィスの渡邉堅一郎社長(撮影/藤井厚年)

 現在、画像の切り抜き作業はAIによる自動化技術も進んできている。渡邉氏は、将来を見据えてこう意気込む。 「画像の切り抜き作業は、技術の発展により今後AIへの代替化が進み、5年、10年後にはこの仕事自体が無くなっている可能性もあります。今後は、当社も生き残りをかけて、自社でAI研究を進めることも視野に入れています」 <取材・文/伊藤綾>
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
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