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オトナの「本音と建前」使い分け術

本音で語り合う――素晴らしい、と思う。が、こと職場においては“建前”が無用な軋轢を避け、仕事を円滑に進める潤滑油ともなるのも事実。上司⇔部下の会話に隠れる本音を酌みつつ、言わぬが花が大人のコミュニケーションだとも思うのだ

◆建前は本音で語るための手段である

建前は本音で語るための手段「本音で語り、キチンと自己主張すべし」「建前のやりとりなんて、本当の付き合いじゃない!」

 そんな風潮が強くなっているけれど、いや、ことビジネスシーンにおいて、本音至上主義がいいものなのか? コーチングのプロである播摩早苗氏は異を唱える。

「建前と一口にいっても、上司が自分の保身のためのエゴからくる建前もあるでしょうし、部下を傷つけないように成長を促すための建前もある。前者は悪い建前ですが、後者は会社の組織目標達成に貢献するものですから、必要な建前といえます」

 実際、「『ごめん。申し訳ない』を連呼しつつ仕事を押し付ける上司。心にもないのが丸わかりで、そんな上司に腹を割って話すことなどできない」(27歳・女・広告)など、見え透いた建前に怒りを露わにする声も多く聞かれた。

 こうした軋轢は身に覚えもある人も多いだろうが、社会心理学者の渡部幹氏は「これらは建前と本音が“裏と表”の関係になってしまっている」と解説する。

「おべっかやへつらい、あるいは自分の利益だけを相手から引き出そうとするその場しのぎの言葉は“裏”。もちろんウソや誇張が入ることもあるけれど、互いにとって将来の利益となるのが建前なんです。建前はあくまで、本音で話せる関係を築き上げるまでの入り口であり手段なんです」

 部下を育て生かす上司力を提唱する人材育成のプロ・前川孝雄氏が指摘するように、「職場でもどこかのタイミングで本音と本音を衝突させて、より深い人間関係を構築すべき」であり、そのお膳立てに有効なのが建前。つまり、本音と建前は本来、対立するものでなく、関係性の段階により使い分けるものなのだ。

 逆に言えば、「関係性ができ上がっていないのに本音トークしかしない人は、コミュニケーションの幅が狭い人」(渡部氏)とも言える。

 まもなく4月。新入社員が入ってくる。上司として先輩として、彼らを指導する立場に立つ人も多いだろう。

 職場における本音と建前のお作法を会得するために、SPA!が調査した「上司×部下[本音⇔建前]翻訳辞典」(http://nikkan-spa.jp/171643)を参考にしてもらいたい。

【播摩早苗氏】
フレックスコミュニケーション代表
各種社員研修、セミナーを設計、運営するコーチングの専門家。近著に『えっ、ボクがやるんですか?』(幻冬舎)。5月に同テーマの管理職版をPHP研究所から刊行予定

【渡部 幹氏】
社会心理学者
北海道大学助手、京都大学助教等を経て現在、早稲田大学高等研究所招聘研究員。社会制度や組織の維持・変容を司る心理的基盤について研究。共著に『不機嫌な職場』(講談社)

【前川孝雄氏】
FeelWorks代表取締役
『リクナビ』編集長などを歴任後、リクルートを退社。人材育成・組織活性化コンサルティングに従事。青山学院大学兼任講師も務める。最新刊『働く人のルール』(明日香出版)

イラスト/StudioCUBE.
― 上司×部下[本音⇔建前]翻訳辞典【1】 ―

働く人のルール

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