仕事

Uber Eats配達員、自転車で瀬戸内しまなみ海道を疾走

牡蠣が食べ放題


 尾道駅近くの駐輪場に自転車を止め、細い坂道をゆっくりと上っていく。少し苔生した石垣、瓦屋根の古い家並み、石段を颯爽と下りてくる一匹の猫……。東の空から昇りはじめたばかりの太陽が琥珀色の滲む光でそれらすべてを優しく包み込んでいく。映画の中で見たのと同じ景色の中にいるという高揚感がじわりと広がっていく。
千光寺

千光寺からの尾道の景色

 千光寺まで上ると、そこから尾道の街全体を眺めることができた。海を挟んでその向こうに見えるのが向島。しまなみ海道で最初に渡る島である。  昼食は尾道の牡蠣小屋でとった。今の時期ならではの牡蠣の食べ放題(2800円)。炭火の網の上に殻付き牡蠣をトングで並べていく。やがてその殻がパカッと開き、その隙間から汁がぐつぐつと煮たっているのが見える。身がほどよくプリプリに焼けたところでポン酢を少し垂らして口に放り込んだ。
牡蠣の食べ放題

牡蠣の食べ放題は2800円

 くーーーッ!  溢れ出す牡蠣の旨味。これが食べ放題だなんて堪らない。いっしょに日本酒も飲みたくなってくるが、これからまた自転車に乗るのでそれは我慢である。

しまなみ海道を疾走する

しまなみサイクリングロード

しまなみサイクリングロードを自転車で疾走する

 腹を満たしたところでいよいよしまなみ海道の橋を渡った。島に着いてからは主に海沿いのサイクリングロードを走った。陽光に煌く海面、穏やかな波の音……。やがて遠くのほうにまた別の島とそこまで繋ぐ橋が見えてくる。  ギイイッ……。  しばらく走っていると、自転車が軋むような音を立てはじめた。これもだいぶ老朽化が進んでいるようである。  もともと東京を出発する数日前に中古で購入したものだった。購入前からかなりの距離を走ってきただろうし、僕に買われてからはまたさらにとんでもない距離を走らされている。このあたりでがたが来てもおかしくないのかもしれないが、この旅のゴールである沖縄まではなんとかもってもらいたいものである。僕には新しい自転車を購入する金銭的余裕などないのだから。  悲鳴のような音を立てる自転車に鞭打つようにしてさらに強くペダルを漕いだ。そしてぐんぐんと近づいてくる対岸の島にゴールの沖縄の姿を重ね合わせた。  
小林ていじ

所持金3万円で東京を出発、「Uber Eats」の配達で旅費を稼ぎながら沖縄まで自転車で旅する筆者・小林ていじ

【79日目】 <支出> 食費:1745円 電車賃:480円 合計:2225円 <収入> 4845円 残金:2万8688円 【80日目】 <支出> 食費:2187円 電車賃:480円 合計:2667円 <収入> 4198円 残金:3万219円 【81日目】 <支出> 食費:1435円 電車賃:240円 合計:1675円 <収入> 4857円 残金:3万3401円 【82日目】 <支出> 食費:5152円 宿泊費1泊分:2268円 合計:7420円 <収入> 0円 残金:2万5981円 <取材・文/小林ていじ>
バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。
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