Uber Eats配達員、自転車で瀬戸内しまなみ海道を疾走
僕は普段、日雇い派遣などの仕事で稼ぎつつ、時間を見つけてはタイなどの東南アジアを中心に旅してきた。この状況では海外旅行には行けそうにないが、日本国内ならば比較的自由に動けるようになってきている。旅がしたい。でも、社会の底辺で生きる僕にはお金がない。そこで「Uber Eats」の配達で稼ぎながら国内を自転車で旅するという方法をとることにしたのである。
旅に出て79日目、僕は福山にいた。この日から81日目までの3日間は観光もせず、遊ぶこともなく、ただ黙々とウーバーの配達だけを続けた。
81日目は昼前から小雨がパラつきはじめた。レインコートが必要になるほどの雨量ではなかったが、それでもその冷たい雨は手袋の上から僕の指先の体温をじわじわと奪っていく。やがて感覚も麻痺していき、配達アプリの操作や自転車に鍵をかける動作が覚束なくなっていく。しかし、これだけ苦労して配達してもこの日の収入は5000円にも届かず、ふうッとため息がこぼれた。
82日目。福山のゲストハウスを出発。次の目的地は松山だが、この日はその中間地点である大三島まで行くことにした。広島県尾道市から愛媛県今治市までは「瀬戸内しまなみ海道」として瀬戸内海の島々と橋で結ばれており、サイクリングロードも整備されている。島々の風景を眺めながらここを走るのがこの旅でいちばんの楽しみだった。
しかし、その前に尾道を観光していくことにした。数々の映画作品の舞台となった尾道もいつか必ず訪れたいと思っていた場所だった。
黙々と配達を続ける日々
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バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeチャンネル「ていじの世界散歩」。100均グッズ研究家。
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