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時短要請下の飲食店で起きた「客の変化」。20時前後でこんなに違う

8時以降「お客さんはとにかくおとなしい」

サラリーマン 時短要請に従えば一日6万円の協力金が支払われるが、店舗の家賃や人件費などの固定費には及ばないという飲食店も多い。そこで、夜8時以降も営業を続けている店も少なくない。  東京都港区で、現在も深夜まで店を開けている居酒屋オーナー・神田史さん(仮名・30代)は、以前より「治安が良くなった」と話す。 「闇営業……そうですね、そうかもしれないですね。ただ、そのおかげか、お客さんはとにかくおとなしい。揉め事を起こして会社や家族にバレたり、万一ニュースになるようなことがあれば大変じゃないですか。以前はなんでもアリのダメ客ばかりでしたけど、そういうお客さんが今はしっぽり、楽しく飲んでくれています。これならば、お店を開け続けたほうがいいな、と思う理由でもあります」(神田さん、以下同)  神田さんの店は、緊急事態宣言以前とは変わらぬ客入りで、かつては考えられなかった「予約」まで入るようになったというのだから、何がどう転ぶかわからないもの。

客同士に妙な連帯感

 千葉県内にあるバーのオーナーも、最近はポジティブな「客の変化」を感じているという。 「単価が安いバーですから、以前はイケイケの若い客、酒をがぶ飲みして他の客に絡むようなおっさんばかりの店でした。緊急事態宣言の期間中も、やはりイケイケドンドンな客しか来ないんですが『やっぱ飲みたいよねえ』とか『この店はオアシスだ』なんて言って、客同士で盛り上がっている。リアルな人付き合いも減ったじゃないですか、だから人恋しい客がうちの店にきて、仲良くなってるみたいな」(神田さん)  若い客が店内で写真を撮り、飲んでいる様子をインスタグラムにあげようとしていたところを、隣にいた中年客が「注意」した。  以前なら「なんだジジイ」と喧嘩がおっぱじまるようなシーンだが、中年客は「この店がバレちゃうだろ」。若い客は「あ、そうか! スンマセン」と事態が丸く収まる様子を見て、神田さんは感激したともいう。 「結局、後ろめたい気持ちを共有しているせいか、通っている客同士に妙な連帯感ができているというか。正直、コロナ前より営業しやすいですよ」(同)  時短営業店もそうでない店も、今改めて「客」と対峙し「客」に思いを馳せているなかで垣間見られた意外な光景。人間関係のあり方や価値観が大きく変化していく様を、我々は目撃しているのかもしれない。<取材・文/山口準>
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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