コロナ禍で人気機種が続々撤去。追い詰められたパチプロのリアル
90年代半ばには30兆円産業と謳われ、国内でも有数の市場規模を誇ったパチンコ産業。だが、公益財団法人日本生産性本部余暇創研が発表する『レジャー白書2020』によると、現在の推定市場規模は約20兆円。それでも未だ巨大産業であることに変わりはないが、四半世紀の間に10兆円も市場が縮小した業界はほかにはない。
「自分はパチスロ専門だったんですけど、ここ数年打ち続けた機種が全部撤去されてしまったんです。しかも、代わりに導入された新しい台は全然出ないし、食えるレベルで毎月コンスタントに稼ぐのが難しくて。それで潮時だと思って足を洗うことにしたんです」
以前のパチスロ機は、ほとんどが一撃で5000枚や1万枚以上出る可能性を秘めた仕様になっており、1日で10万円20万円勝つこともあった。それがファンから支持された大きな理由のひとつだが、「射幸心を煽りすぎる」との理由から警察庁がホールからの撤去を通達。2019年以降、次々と人気機種がホールから姿を消し、現在は射幸性を抑えた新しい基準を満たした台ばかりになってしまったのだ。そのため、多くのパチプロが彼のように廃業したと言われている。
「パチスロは大当たりの確率が6段階あり、店側が自由に選ぶことができます。確率の高い台に座ることができれば勝ちやすいですが、お客は台の設定を知らないため、予想することしかできません。
でも、最近は店側も経営が苦しいのか確率の低い台ばかりだと言われ、そんな状態では勝つのは当然難しくなります。ネット上には出ると評判の店の情報が飛び交っていますが、そういう店は開店前からお客が集まり、台を確保するのも大変なんです」
川村さんのパチプロ歴は3年で、その前は普通の会社員。当時から仕事終わりや休日はいつも打っていて、趣味が高じてプロに転身。もともと凝り性で情報収集などにもマメに行い、コンスタントに勝つことができていたそうだ。
しかし、開店前から並ぶので朝早く家を出なければならず、また夜遅くまで出玉状況をチェックするために各地のホールを回るなど会社員時代よりもハード。体力的にキツくなってきたと感じる中で台の撤去が始まり、これ以上パチプロを続ける気にはなれなかった。
「特に昨年4~5月の緊急事態宣言中は全国のホールが臨時休業となり、完全に収入が絶たれました。1月からの二度目の緊急事態宣言では休業にこそなっていませんが営業時間を短縮しているホールが多く、あまり出ない今の機種で勝つのはますます大変でしょうね。昨年のうちに辞めて正解だったと思っています」
実は、パチプロ転向後の最初の2年は年間500万円近くの儲けを出していたが、昨年は250万円ほど。思うように勝てない時期が続き、正直ギリギリの生活だったという。
「食事は外食か買ってきて食べることが多いため、食費はどうしてもかさんでしまいます。それに評判のいいホールまで遠出することも多く、交通費もバカにならない。家賃などもありますし、去年は軍資金用にストックしていたお金を少しずつ切り崩して補填しているような状況でした」
昨年11月をもってパチプロからは引退したそうだが、その後も生活は厳しいまま。パチプロだった3年間は職歴の空白期間となり、10社近くの求人に応募したがいずれも書類選考で落とされてしまったそうだ。
全盛期には3000万人とも言われたパチンコ・パチスロ人口も現在は推定890万人と3分の1以下に激減。ホールから足が遠のいた者の中には、勝った儲けで生計を立てていたパチプロと呼ばれる者たちもいる。今は日雇いの建設作業員として働く川村孝弘さん(仮名・32歳)もそんな元パチプロのひとりだ。
今はパチプロとして生活できるほど稼げない
儲けが半減。生活を維持するのが困難に
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ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。
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