ライフ

商店街店主たちの間でくすぶる助成金格差「飲食店だけ潤うのはおかしい」

以前とは180度異なる対応

いちご狩り 北関東某所の観光地でも、同じようなことが起きていた。観光農園を経営する富岡良子さん(仮名・40代)が唇を噛み締める。 「農園の前には建設系の会社があって、土日祝日など、お客さんがたくさん来る時は駐車場を使わせてもらっていたんです。ただでは気が引けるので、農園で採れた作物を定期的にお分けもしていました。先日の土日は、春の訪れを感じたいというお客さんがたくさんきてくれて、久々に駐車場を使わせていただいたんです」(富岡さん、以下同)  ひっきりなしに訪れる客に対応をしていると、農園で遊び、ついさっき帰路についたはずの客が、血相を変えて戻ってきた。 「そのお客さん、私がお電話で案内し、農園の前の会社の駐車場に車を駐めていたんです。車に戻ってみると“無断駐車”の張り紙が貼られ、近くにいた男から罰金を請求されたと言うんです。間違って別のところに駐めてませんでしたか? と駐車場に行ってみると、そこには会社の代表の男性が立っていました。私が定期的に作物をお持ちする、駐車場を貸してくれていた男性です」(富岡さん)  以前までは気前よく貸してくれていた駐車場で、今回もいつも通り使わせてもらっただけだったが、男性の主張は以前と180度違っていた。 「無断で使用したのだから、客がカネを払わないなら私が払えと……。そんな無茶なと思いましたが、たんなる口約束だし、契約をしているわけでもない。確かに、これだけお客さんが来て駐車場をお借りしたのも半年以上ぶり。事前に説明していなかったことは落ち度ですが」

コロナ禍でともに喘いでいたはずなのに…

 富岡さんが思い出したのは、昨年秋のこと。ちょうどその時も、感染者数が横ばいになり、農園を訪れる客が増え始めていた。そこで、駐車場を貸りるかもしれないと男性の事務所、そして家を訪ねたが、不在だった。いや、不在ではない。家の中からはテレビの音が聞こえていて、明らかな「居留守」を使われていたのである。 「あの時はおかしいな、と思うくらいでしたが、農園に客が来ている様子を見て、やりきれない気持ちになられたのだろうと思います。後から男性の奥さんが来て、謝って下さいました。男性の会社は仕事が急激に減り、従業員もクビにしてなんとか会社を存続させようと必死……なのに、私は……」  もちろん、先の坂口さんも今回の富岡さんも、客が戻ったことについて、誰かに自慢したり、見せつけているということは全くない。だが、つい先日まで、コロナ禍でともに喘いでいたはずなのに、坂口さんや富岡さんだけがおいしい思いをするのは許せない、そんな気持ちを抱く人がいたのかもしれない。  隣の芝生は青く見えるし、誰かが笑えば誰かは泣いている……コロナ禍から復興を目指すなかで、必ずどこかに出現するだろうこうしたトラブルを乗り越えない限り、以前の生活は取り戻せないのだ。<取材・文/森原ドンタコス>
1
2
おすすめ記事