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プロ野球、無観客キャンプが与えた意外な「好影響」

現役コーチ「OBが来なくて超やりやすい」

プロ野球キャンプ

写真は2017年の沖縄キャンプの風景。無観客となった今年と違い、大勢のファンで賑わう光景も、キャンプ中の風物詩だった

 厳戒態勢のキャンプでは、メディア取材に付きもののOB解説者も例外なく「グラウンドレベルでの取材禁止」、「ぶら下がり取材禁止」、「個別取材は基本的にリモートで」を通達された。そのため、沖縄行きを断念した解説者はかなりの数に上ったという。これが福音だったのか、「余計な指導をするOBが来なくて今年はいい指導ができた」という声が現場からは聞こえてきた。 「体育会系の世界ですからね。先輩が出身校の夏合宿で余計な指導をしに来るみたいな話ですよ、OBなんて(笑)。しかもPCR検査を受けないとダメ、ってなったことで高齢のOBほど来なかった。高齢であればあるほど“レジェンド”なので、グラウンドで選手に勝手に話しかけて指導されても、選手も私らコーチも、監督ですら断れない人もいる。でもね、肝心の指導が古いんですよ。自分たちが現役時代の感覚で指導するから、困惑しちゃう選手は多いんですよ。  せっかく二人三脚で積み上げてきた練習が全部崩れちゃうこともあるくらい。入団したばっかの若い選手から『●●さんから、こうやって投げろって言われたんですが……』って、苦しそうな顔して相談されることもある。私なんかは『適当に聞き流してイイよ』って言っちゃうんですが、シーズン中に球場に来て『なんで言ったとおりにしないんだ』って言ってくる人もいるから始末に悪い。でも今年はそれがないですからね。キャンプのアタマから最後まで一貫した指導をすることができた」(某球団現役コーチ)

愛人を連れてくるOB解説者も……

 だが、こうした熱血漢ならまだしも、何をしに来たかわからないようなOBもいるという。 「キャンプ取材って、局や新聞社の金で行く年に一度の慰安旅行みたいな感覚のOB解説者は結構いるんですよ。私が度肝を抜かれたのは白いスーツを来て、愛人まで連れてきた監督経験もある大物解説者ですね。出身チームではない別のチームの“取材”で来ていたんですが、ベンチにデンと座って、愛人が後ろに立って笑顔を振りまいていたのを見たときは、さすがに呆れました。そのチームの監督、露骨に嫌な顔をしていましたしね」(スポーツ紙デスク)  かつて清原和博氏が白スーツでキャンプ取材に現れた時には、世間もなんじゃこりゃ、と騒然となったが、このOBを見た記者たちもさすがに「なんじゃこりゃ」となったとか。  雑音もなく野球に集中できた今年のキャンプ。意外な選手が成長してシーズンを盛り上げるのかもしれない。<文/谷川一球>
愛知県出身。スポーツからグルメ、医療、ギャンブルまで幅広い分野の記事を執筆する40代半ばのフリーライター。
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