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3時のヒロイン福田麻貴の「容姿ネタ封印」は、世の中が求めていることなのか

若者は本当に「容姿いじり」を受け付けないのか?

福田麻貴

3時のヒロイン 福田麻貴オフィシャルブログより

 福田麻貴は、まずネットのコラム(charmmy 2021/04/19「容姿いじりの“タブー”って何?」)の中で、彼女が今回指摘した「若者の風潮」について書き、そのコラムを入稿してから、それが掲載されるまで1ヵ月ほどあり、その間になぜか先走って件の「容姿ネタ放棄宣言」をしたらしい。そのコラムを読むと、福田が感じた若者の風潮は、劇場で自覚したものと言うよりも、ネットの書き込みなのだとわかる。もしそうだとしたら福田麻貴の「大衆」の捉え方は間違っているように思う。ネットに書き込みをする人たちはむしろ「少数派」なのでは?  福田麻貴の発言をいくら辿っても、ネット書き込み以外の、「容姿いじり」を受け入れない具体的な若者像が見えてこなかった。だんだん福田の主張がふわふわしたものに感じ始めた。劇場で受けなくなったのはネタの質のせいでは? 若者がコンテンツを見てフェイクかリアルか見分けがつかないと言うのも福田の憶測でしかなく、本当に若者がそんなにバカだろうか?  「ワイドナショー」で、兼近も他人をそしる類の笑いは、プロ同士がやれば、笑いが成立するが、素人がやれば、人を傷つけてしまう。若い人が芸人の真似をして嫌な思いをするから、そういった笑いを敬遠するのも無理ないと主張した。しかし、それは若者が他人をそしる笑いを面白いと感じたから、芸人のマネをしたということでは? 彼らの言質を追えば追うほど、若者の実像がわからなくなった。

福田さん、リラックスして!

 そもそも福田麻貴は、なぜわざわざ「容姿いじり放棄宣言」などしたのだろう? 黙って自分たちの演目を変えればいいだけの話だ。「容姿いじり」を得意とする他の芸人にとってはいい迷惑なのではないか? また憶測でレッテルを貼られてしまった若者にとっても迷惑な話だと思う。  「ワイドナショー」の出演の冒頭で、福田は「まさかこんなに騒ぎになるとは思わなかった」と言っていた。彼女は、視野の狭いネットの書き込みに、不安や苛立ち、そして怯えを覚えて、思わずつぶやいてしまっただけなのかもしれない。しかし、ネットの書き込みを「大衆」と捉えて、その主張に根拠薄弱な理屈をつけてしまったら、自分自身で強大な亡霊を作り出し、それに苦しめられやしないだろうか。

 しかし「大衆」とは言えないものの、極端に視野が狭いネットの書き込みは、現代人の(多分若者の)特徴的な側面を表しているのは間違いない。だから、福田麻貴の何気ないツイートが、大きな波紋を呼んだのだろう。笑いをクリエイトする人たちは、よりいっそう精神的なタフさが要求される時代である。  突然だが、私は非常に福田麻貴が好きだ。テレビに出てるとチャネルを止めてしまう。失礼な言い方だが、見ているとなんだか妙にいじらしい。件のコラムで、福田は「容姿を欠点と捉えない世界が、理想の社会のゴールだ」と結論づけた。福田さん、その社会、ロボットに人類が滅ぼされた未来だよ! 福田さん、リラックス! 「大衆」なんてどこにもいないよ! <文/椎名基樹>
1968年生まれ。構成作家。『電気グルーヴのオールナイトニッポン』をはじめ『ピエール瀧のしょんないTV』などを担当。週刊SPA!にて読者投稿コーナー『バカはサイレンで泣く』、KAMINOGEにて『自己投影観戦記~できれば強くなりたかった~』を連載中。ツイッター @mo_shiina
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