パスをもらう前から「その先の動き」を決められるように
速読脳トレにより実感した変化はそれだけではない。悩みが改善し不安要素がなくなると、これまでは意識できなかったことに意識が向くようになり、プレー中に入ってくる情報量が格段に増えてきたのだとか。
「情報量が増えると、いま現在のプレーだけでなく、その先のプレーのことまで考えられるようになります。
たとえば、パスをもらう前の段階で、すでに周りの状況を把握できているので、次の動きに素早く移るための準備ができるんですよ。周囲からは『ノールックでパスした! なんで?』と思われるようなプレーをしたときも、自分としては、
パスをもらった瞬間に準備をしていた次のパスを出しただけなんです。これは全日本で活躍していた全盛期の頃にもできなかったこと。スポーツにおける脳の力の重要性を知っているか知らないかでは大違いだなと思いますね」
できるプレーが増えたことで、練習にも変化が。
「情報量が増え状況を的確に把握できるようになると、『もっとこうしよう』というアイデアが生まれますし、自分に足りない部分も明確に見えてくるようになりました。
たとえば、ユニフォームの色で敵と味方の動きを瞬時に捉えられるようになっているのに、それでもミスをしたとしたら、それは技術不足のせい。視覚的情報が増えたことで、『どのようなパスやシュートがより効果的か?』という課題は見える。そうなれば、あとはパスやシュートの精度をあげていけばいいわけなので、練習のプランを立てやすくなりました」
こうした成果もあってか、2019年には6年ぶりに世界選手権の日本代表メンバーに選出。試合ではベテランとしての存在感を見せつけた。
その後、日本リーグの強豪・大崎電気を退団し、母校である日本体育大学に再入学して技術や指導方法を学びながら五輪出場を目指していた宮﨑選手だが、先述のとおり2020年に痛めていた右肩を手術することに。いざ手術をしてみると想像以上に状態は悪く、全治は1年~1年半。長いリハビリに生活に苦しむこととなったが、そんななかでも速読脳トレの効果には助けられたという。
「呉先生とのトレーニング後は、不思議なことに固まっていた肩がいつもより動くようになるんです。脳が活性化してブレーキが外れるんでしょうね。機能面での問題だけではなく、『痛い、動かない』と脳で制御している部分も大きいんだなぁと実感しました」
さらに、速読脳トレにより頭も体もスイッチが入りやすくなったとか。
「アスリートは一日休むと翌日にオフからオンまで持って行くのが大変なのですが、休日中のどこかにちょっと速読脳トレを入れるだけで、翌日スムーズに動けるんです。落ち込んでなにもやりたくない時期があったのですが、そんなときでもトレーニングをすると頭がすっきりして生活の乱れをすぐに立て直せました」
日本体育大学在学中、スペインへ留学。帰国後、大崎電気に入社、ハンドボール日本代表としてオリンピック選、世界選手権などに出場。2009年には日本人男子初となるアルコベンダス(スペイン1部リーグ)へ移籍。帰国後大崎電気でプレー。 2017年日本リーグフィールドゴール歴代1位(915得点)に到達。2019年3月に大崎電気を退団。4月より日本体育大学に再入学し2021年3月に卒業。
6月プロバスケットボールBリーグのアースフレンズ東京Zが新設するハンドボールチームの、選手兼監督に就任した。1981年6月6日生まれ、大分県出身
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