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小山田圭吾が“いじめ釈明”で語った 、“ワルに見せたかったお坊ちゃん”の軽率

「才能があるヤツほど私生活はクズ」という論法

 悪趣味といえば、ヘヴィメタルの帝王ことオジー・オズボーン(*1)。ステージ上で生きた鳩やコウモリを食いちぎったり、ときには蟻を鼻から吸い込んだりと、やりたい放題でした。  そして、含蓄のある曲を書くソングライターは、だいたいイヤな奴。ルー・リード(*2)は、皮肉と嫌味を連発するインタビュアー泣かせで有名。DVや人種差別発言の噂もあり、伝記の著者は彼を「モンスターだが、偉大なアーティスト」と評しています。  同じような例は、ラッパーのカニエ・ウェストにも当てはまるでしょう。あのオバマ元大統領が、「とんでもない大バカ野郎だが、その才能は認めざるを得ない」とコメントしたこともあるほど。  故・大滝詠一や山下達郎に絶大な影響を与えたフィル・スペクター(*3)は、女優を射殺した罪で禁固刑に処されたすえ、獄中死しました。スタジオでジョン・レノンに向けて発砲したなど、とんでもないエピソードには事欠ない人物です。
フィル・スペクター

『フィル・スペクター アルバムコレクション』

 こんな具合で、才能があるヤツほどプライベートはクズという論法を、ロックエンターテインメントの世界では常套手段として用いてきた歴史があるのですね。それを踏まえたうえで、「イメージを変えたかった」という発言を、改めて考えてみたいと思います。 *1 『ブラック・サバス』を結成し、ソロ歌手としても大成功を収める *2 アメリカのロック歌手。パンクバンド『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド』のオリジナルメンバー。1942-2013 *3 アメリカの音楽プロデューサー。多くの楽器を一斉に演奏することによって生む“音の壁”と呼ばれる独特のサウンドで知られる。1939-2021

裕福でオシャレなお坊ちゃん

   まずは、そこまでして小山田圭吾がかなぐり捨てたかった“イメージ”とは何なのかを見ていきましょう。  親族に著名な芸能人を多く持ち、経済的にも文化的にも恵まれていた少年時代。青年期を迎え、小沢健二とフリッパーズ・ギターを結成。こちらも、世界的な指揮者、小澤征爾を叔父に持つセレブでした。
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おしゃれ女子の愛読誌『Olive』の「理想の男の子」特集では、表紙に小山田圭吾と小沢健二が(1991年5月18日号)

 2人の若き“上流”は、最先端からヴィンテージに至るまで、様々な洋楽を洗練された手法でコラージュしてみせました。「恋とマシンガン」や「Groove Tube」などの代表曲は、まばゆい光を放ち、”文化の中心地たる東京”のイメージに、多大な貢献をもたらしたと言えるでしょう。  その影響は音楽にとどまりませんでした。ファッションリーダーとしても注目を浴び、ファッション誌やメンズコスメのCMに出演するなどして、当時の若者たちにとって、カリスマ的存在にもなりました。  問題となった雑誌『クイック・ジャパン』(1995年8月)の「いじめ紀行」のリード文にも、<小山田圭吾といえば、数年前にアニエスb.を着て日本一裕福そうなポップスを演っていた、あのグループの一員だ。>と書かれていたほど。
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鬼畜エピソードでワルに見せたかった?
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