更新日:2022年11月18日 20:27
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山口組トップも登場。作家・生島マリカが咲かせた『修羅の花』の衝撃内容

「金で動かないから怖い」山健組トップが漏らした本音

――確かに、『修羅の花』本編を読んでも、あり余るお金があるのに全然幸せそうに感じられませんでした。 「生活のためにお金は必要です。でも、お金があればあるほど幸せになれるかと言われれば、そうではありません。いろいろな経験から、お金の量と幸せの量は必ずしも比例するものではないということを学びました。先ほど渡辺さんと桑田さんのお話をしましたが、当時はシングルマザーで、一人で赤ちゃんを育てるのに疲弊していたこともあって『あれこれよくしてくれ大切にもしてくれるし、経済的に頼れる桑田さんとなら……』と考えたこともありました。でも今なら、一緒に花を愛でてドライブを楽しみ、身を挺してわたしを守ってくれ、ニコッとはにかんで財布に5円玉を忍ばしてくれる渡辺さんのような男性との方が幸せになれるんだろうなと思います。  これは決して桑田さんを貶めているわけではありません。昭和には社会全体に存在していた任侠的なマインドが、少しずつ世の中から失われつつあり、お金ですべてが解決される時代となってしまっていたということです。生島が苦しんでいたのも、その副作用だったのでしょう。  ある時、桑田さんは言いました。『明日から九州と沖縄の組関係者と会いに出張や。あいつら金では動かへんから大変やねん』。その口ぶりから桑田さんは分かっていたと思うんです。かつての自分たちのように、お金ではなく侠客心で動く人間の強さを。でも、桑田さんのような方も時代の流れには逆らえなかったんです」

昭和の男の生き様に引かれる理由

――ヤクザの世界だけでなく、現代社会でもお金さえあれば解決できてしまうことが増えているように感じます。マリカさんの思う幸せとはなんでしょうか? 「前作『不死身の花』を出したのが約6年前になりますが、その直後に8000億円の資産がある夫と別れました。また自由でお金のない生活に戻りつつありますが、『以前マリカさんにはお世話になったし、ご飯くらい奢るから顔を見せてよ。話を聞きたい』と言ってくれる若い友人も少しはいますし、何かしたいなと思い立って相談した時には力を貸してくれる仲間がいたりね。以前のようにファーストクラスで各国の一流ホテルを住まいに世界中を渡り歩く優雅な生活は手放しましたが、今は今で労わり合い、慈しみ合う友達がいる幸せがあります。  わたしには家族がいませんが、いた時も、このような充実感を得たことがあまりありませんでした。お互い心から心配し合い慈しみ合う友人や仲間がいる充足感、誰かから大切に思われているという安心感があるのが本当の幸せで豊かな人生なんだと思います。もちろんお金は大切だし、たくさん稼ぐこともとても立派なこと。だけど、お金に使われてはいけない。お金に振り回されて、お金に取り憑かれてしまったらお金の奴隷になってしまう。お金に支配される人生が幸せとは思わない。真の幸福を願うなら、決してお金に負けてはいけないとも思うのです。  人間関係も遊びも、お金に頼るだけの人生なんて正直ダサいです。戦後の動乱期は腹に出刃包丁を隠し持ち、義理と人情に命を懸けて生き抜いた昭和の男の生き様はやっぱり強く美しい。わたしから言わせれば、今は男がいない時代なのです。男がいない拝金主義の世界では、義理も情もなく、自分さえ良ければいいという利己主義のもとに、弱いものは捨て置かれる世界が蔓延ります。それでは人間社会は良くならないんですよ。世の男が金に動かされていては侠気を失いかねません。ちょうどいま世界は大きく変化しようとしています。世の中が今より良くなるには、再び男に任侠心を取り戻してもらわねばなりません。男には心にナイフと、そしてポケットには花束を忍ばせて欲しい気持ちです。  お金は使えばなくなりますが、人の気持ちや情はなくなりません。互いを大切に思う結びつきは、お金より確実に頼りになるとも言えるのです。お金が解決してくれることも当たり前に沢山ありますが、人の心はお金だけでは満たされないものなのです。どんな極悪人でも、金持ちでも、貧乏人でも、誰かと厚い友誼や哀を交わすことができて初めてほんとうの幸福感が生まれます。『人は愛するに足り、真心は信じるに足る』これまでの自分自身の経験や、傑物たち、そうでない方々とも身近に交友してきたわたしなりの結論なのです」 * * *  90分に渡り、インタビューに答えてくれた生島マリカ氏。彼女が熱弁する「昭和の価値観」こそ、令和となった今こそ見返すべき本質なのかもしれない。『修羅の花』には本稿で紹介しきれないほどの濃密なエピソードが詰まっている。 カネ、カネ、カネととかく振り回されがちな今こそ、意地や義理、メンツ、なにより人間関係を重視する世界に思いを馳せることこそ、幸福への近道なのかもしれない。 取材・文/桜井カズキ 撮影/中里吉秀
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修羅の花

山口組トップから伝説の経済ヤクザの息子までが素顔を見せた

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